異世界のアフレクションネクロマンサー168
何ら気に留める事も無ければ、特筆すべき事も無い。
口にしているのは普通の果実酒。
もしも、何かを言うとしたら戦場で風味が抜けたのと違い、果実のしっかりとした味わいが口一杯に広がって鼻孔を幸せに満たし……
「ごめんなさい!!私と同じ物と言わなきゃいけなかった」
「姫と同じ物?フルーツジュースをですか?」
「アフレクションネクロマンサー様も、お酒が苦手なの」
リーフの慌てた言葉を聞いた途端に、自分には果実酒は飲みにくい飲み物で、アルコールのムワッとした熱さで果実の風味を味わう所では無いはずなのだが、
「いえ、果実酒をこのまま頂きます」
「飲めるんですか?」
「どうやら、慣れてしまったらしいです」
そう言うと礼人は、大きなコップに満たされている果実酒をゴクゴクと飲み始める。
お酒が苦手というのが冗談かのように果実酒を口から喉へと流し込み、一度も息継ぎをすることなく飲み干すと、
「良い飲みっぷりで」
「ここまで豪快に飲まれる方は、中々いません」
ドワーフの二人は、礼人の飲みっぷりにやんややんやと囃し立てる。
礼人の飲みっぷりは酒豪そのもので、とてもこの間まで酒が苦手な者が飲めるようなペースでは無かった。
「……そしたら、服を羽織りましょう」
リーフは、人が変わったかのような礼人の飲みっぷりに触れようとせず、持って来て貰った服を羽織る。
「それはローブですか」
羽織った服は体をすっぽりと覆うフードローブで、顔の肌も手の肌すらも露出させないような服であった。
「この服装は、鍛冶場と関係あるんですか?」
まるで、怪しい召喚士みたいな出で立ちに首を傾げるが、
「はい、皆様には羽織って頂くようにお願いしております」
ドワーフは、当たり前のようにフードローブを手渡してくれる。




