異世界のアフレクションネクロマンサー162
長い夜の間、冷え切った彼を抱きしめながら考える。
アフレクションネクロマンサー様は、出来損ないの人魚と戦う際に、自分が負けるような事があれば、この世界のアフレクションネクロマンサーとして私が戦うんだと言っていた。
それまでは、自分が戦うと言ってくれていたが「自分が戦う」っと言ったのは、あの戦いの時の中だけの話じゃなくて、
「それは…私が飛び立てるようになるまで、代わりに戦ってくれるという事ですよね」
アフレクションネクロマンサー様は、自分が朽ち果てる前に、私が飛び立てるようになる時間を稼ごうとしてくれている。
「アフレクションネクロマンサー……」
すっと遠い過去の幻の英雄。
その英雄に自分がなる。
アフレクションネクロマンサー「様」から、アフレクションネクロマンサーへと変えて、自分自身がアフレクションネクロマンサーに。
「私の力……」
手に力を込めると淡く光る小鳥が産まれる。
マナを光に変えて、手から出すのとは違う、淡く光る小鳥を産み出して部屋の中を羽ばたかせると、小鳥は壁に飾ってある絵を淡く照らす。
この街で暮らす者達、家族、亡くなってしまった母が照らし出されて、
「光を……」
自分の中に秘められている力は、照らす事が出来る力。
生きているみんなを闇から守り、亡くなった者達を闇に埋もれさせない力。
命を亡くならせない、存在していた事を無くならせない。
「アフレクションネクロマンサー様…私もアフレクションネクロマンサーに……」
胸に抱くアフレクションネクロマンサー様の冷たい体温が、自分の中に混ざる。




