異世界のアフレクションネクロマンサー160
アフレクションネクロマンサー様に抱き着いた時、布団を被せたのは彼が自分と違う世界の住人だから、隔たりを設けるべきだと思った。
近付いて触れてはいけない存在に、畏れ多くも肌を合わせる事は出来ない。
布団一枚を隔てて、向こう側の領域にいる存在は、自分と謁見してくれる。
向こう側の領域にいる存在は、自分を受け止めてくれる。
恐怖も、悩みも全てを受け入れてくれる。
神のような存在は、自分の味方をしてくれる。
悩みを恐怖を否定せずに聞き続け、あやすように抱きしめてくれる。
アフレクションネクロマンサー様は、私に「くれる」
自分が言えば、何もかも受け止めて「与えてくれる」
違う世界の存在に全てを預けて、自分は震えて布団に籠っていれば、全てを解決してくれる。
そう思い、後は自分が感じた違和感を託して、大人しくしていようとした時だった。
「…………」
向こう側にいるアフレクションネクロマンサー様は、寝息を立てて眠ってしまっていた。
「アフレクションネクロマンサー様?」
さっきまで、自分の事を抱きしめて、あやしてくれていたアフレクションネクロマンサー様が、逆に体を預けて眠っている。
さっきまで、自分の耳元で優しく囁いていた声は聞こえない。
耳元の聞こえて来るのは酷く疲れた寝息。
布団一枚を隔てて、感じるアフレクションネクロマンサー様の小さな体。
抱き着くのではなく、恐る恐る抱きしめてみると、アフレクションネクロマンサー様は必死に生きようとしている。
小さな体は、押し付けられた物から逃げようともせずに、押し付けられた物を何とかする為に生きようとしている。
「アフレクションネクロマンサー様……」
必死になって眠る寝息に、アフレクションネクロマンサー様が言った言葉、
「みんな健やかに生きていける事。それを望んで私はずっと戦ってきました」
その言葉から、彼もまた、向こう側の存在と戦い続けているのを思い出した。




