異世界のアフレクションネクロマンサー153
この世界に来て間もない自分と、この世界にずっといたリーフでは感じ取れる異変に差が出るのは何ら不思議な話でも無い。
「まだ気付いていない事……」
礼人は甘い匂いのする布団に顔を押し付けて目を閉じ、何に気付けていないのか?何を見落としているのか?考えながら温かくて柔らかい布団に身を任せる。
まだ考えないといけない事がある…この世界の根本的な問題には辿り着いたと思ったが………核心に迫っていない………この世界は滅びつつあって…………人減らしをしないといけなくて……………それは間違い無くて……………まちがい……………なくて………………………
「アフレクションネクロマンサー様……」
遠くなっていく意識の中で考え事をしていたが、次第に何も考えずに意識が消えて、次に意識が戻ったのはリーフの呼ぶ声が聞こえた瞬間であった。
呼ばれた声にハッとして布団を払い除けるように顔を上げると、部屋の中は明るくなっていて、
「朝になりました」
考えが浮かぶよりも先に、朝日が昇るまで眠りの底についていたらしい。
自分自身では、まだ頑張れると思っていたが、あの時の部屋に戻って休みたいという気持ちは正直なもので、温かくて柔らかい布団に包まれては抗う術などは無かった。
「……ごめんなさい」
あれ程、リーフの事を守ると大口を叩いておきながら、彼女のぬくもりに抱かれて護られて……意識が完全に途絶えていたともいえる状況は、万が一、怨霊が近付いていたとしても気付けなかったかもしれない。
守る守られるの話をしていて、無防備な状況を護ってくれたのはリーフの方で……
「気になさらないで下さい。アフレクションネクロマンサー様がお休みになられたからこそ、私もしっかりと休めました」
そう言って、優しく微笑んでくれるリーフの目元に寝不足のサインであるクマが描かれていなかったのが、せめての救いだった。
少し格好の付かない形になってしまったが、それでもグッスリと眠れたのは良い事で……病み上がりの体に負担が掛かる行為は辛かったらしく、もう少しだけ眠りたいと思って、温かくて柔らかい布団に体を預けようとした所で、
「……そうだった!!」
ここがリーフの部屋で、リーフに抱きついていた事を思い出すと腰を捻ってベッドからお尻を上げる。
抱きしめたのがリーフの方からとは言え、一晩中女性の部屋にいたというのは、何をしていなくても言い訳が立つ物では無い。
「リーフさん、また後で!!」
後ろめたい事をしたつもりはないが、フレンさん達に変に誤解をされても困ると、部屋から出て行こうとした所で、
「心配しないで下さい。お父様達なら、帰って来て無いですから」
リーフは、礼人が何を心配しているの分かって、この部屋で長居した事は一切問題無いと告げると、
「それよりも…もう少し話をしませんか?」
まだ、この部屋に残って話をしたいと誘う。




