異世界のアフレクションネクロマンサー146
キュルキュルキュルキュル鳴り止まない声。
人の声ではない、死人の声を理解してはいけないと本能が訴えると、耳の中の鼓膜が勝手に張って、声が自分の中に入り込まないように抵抗する。
だが『キュルキュルキュルキュル』鳴るテープのような声は、一方的に礼人に話し掛け続け、どんなに相手にされなくても『キュルキュルキュルキュル』鳴り続ける。
(早く…終わって……)
ずっと『キュルキュルキュルキュル』鳴り響いていれば、いつかテープが耐え切れなくなって、千切れて音が鳴らなくなると信じて声を上げずに我慢していたが、
(き…は……み……て……き…は……み……て……き…は……み……て……)
テープが千切れるよりも先に『キュルキュルキュルキュル』鳴っている音が、同じ事を繰り返し言っている事に気付いてしまうと『キュルキュルキュルキュル』繰り返されていた声が、言っている声を理解し始めてしまう。
それは、礼人が死人の声を理解出来るようになってしまっていく兆候であり、霊が見えるよりも先の覚醒。
しかし、その覚醒はよりにもよってというタイミングでの覚醒で、目の前にいる存在を感じたくないのに、言葉を理解する事で強く認識してしまう。
目の前にある恐怖に飲み込まれないようにランドセルの肩紐を強く握り、恐ろしいモノを見ないように下を向いて、震えながら息をするが、その動作が霊に「あなたに気付いている」という合図になってしまい、
(き…は……み……て……き…は……み……て……き…は……み……て……き…は……み……て……き…は……み……て……き…は……み……て……)
血だらけのサラリーマンをより興奮させて、首を赤べこのようにグルングルン震わせるきっかけとなる。
自分の頭の上でグルングルンと震える得体の知れないモノ。
一体何の為に近付いて来た、何で自分を狙うのか?そんな事が頭を過った瞬間、
「うっ…ぁ……」
恐怖と理不尽さに我慢出来ずに、小さな声を漏らしてしまった。




