異世界のアフレクションネクロマンサー144
霊能者では無かったばあちゃんには、目の前で苦しむ孫を、心の狭間の中から救い出す術は無い。
目に涙を浮かべて欲しいおもちゃをねだる孫を見るように、どうしてあげたら良いのかと困り果てながら、何とかしてあげていと想い苦しんでいた時に、リーフが手を差し伸べてくれた。
ばあちゃんの代わりに手を伸ばし、ばあちゃんの代わりに名前を呼んでくれて……リーフのお陰でこうして生きていられるのだが、出来損ないの人魚と溶け合ってしまった礼人を救えるのは、魂に直接声を掛けられる霊能者くらい。
魂に触れて、自我を取り戻させて変質してしまった肉体を呼び戻させる手助けをしてくれたリーフではあるが、単なるエルフであった彼女が霊能者になれた理由とは?
「私の側に居続けたから霊力に目覚めてしまったんですね」
単純明快な話、礼人の側に居すぎた為だ。
霊能者として目覚めるのは先に述べた通り、血筋や土地柄というのもあるが、無理矢理に覚醒させる方法もあり、今回においては後者の無理矢理に覚醒さる方法であった。
この世界にやって来た時、リーフは姿形は変わっていなかったものの、皮膚が赤く見える位には内部は侵されていて、本人は気付いていなかったかもしれないが、赤いモノの魔の手はリーフの心臓とも言えるマナを蓄える器官を狙い、体の中は寄生虫に蝕まれたかのように半妖化していた。
その時点で、無理矢理に霊能者に覚醒させるという状態で、そのままでは憑り込まれて死に逝く運命であったが、礼人が言霊を掛ける事によって体の中にいた怨霊達がいなくなり爪痕が残った。
赤いモノが作った爪痕は霊道となり、拠点の中で礼人と直接触れる事で、リーフの中のマナを蓄える器官に霊力が流れ込んだもんだから、霊力に目覚めてしまった。
「リーフさんの精神力は凄いです……普通の人なら精神崩壊を起こしてもおかしくなかった」
霊力に目覚めた理屈としては、ここまでなのだが、気になるのは何故リーフが精神を保てた理由なのだが、
(そこは…リーフさんの願いがあったんだろうな……)
精神の部分までは知ろうとは思わない。
礼人は部屋の中に飾られている絵の人達を見て、もしかしたら、この中に答えがあるのではないのかと思ったが、
(無粋だな)
心の根底を触れるのは品が無いと絵を見るのを止めて、
「霊力に目覚めたなら、少しお話しておきたい事があります」
掛け布団の中で、静かに聞いているリーフに話を続ける。




