異世界のアフレクションネクロマンサー142
脈動する街と違って、死んでいるのかと勘違いする程に冷たい屋敷。
中にはリーフがいるというのに、廃れたボロ屋敷の雰囲気が漂う。
「ただいま……っ言って良いのかな?」
自分の仮家……部屋が用意されているとはいえ、旅館に来たかのような特別感と言えば聞こえは良いが、一時的に用意された部屋は少し寂しい。
屋敷の中に入ると灯りは消されていて、外の光が届かない所は闇に包まれている。
「灯すか」
手の中で霊力を光に変えると足元に漂わせて、灯りを確保すると静かに屋敷の中を歩く。
静かな屋敷の目を覚まさないように、足音を一つ立てないようにして、廊下を静かに歩き続けて自分の部屋の前に辿り着き、
「もう少しだけ、頑張らないとな」
部屋の中にある安息に抱かれて、ベットの上で眠りに付いてしまいたい思いもあったが、その思いを我慢して足を踏ん張らせると、一度は自分の部屋に向けた足先を廊下に戻して再び歩き出す。
静かな時に包まれながら、他に行った事があるのは食堂だけなのだが、礼人の足が向かう先は食堂の方では無かった。
来た事の無い広い屋敷の中を、フレン達がいないのを良い事に探索をしている……と言うには、あまりにも迷い無く進む。
まるで、昔から住んでいたかのように屋敷を歩き、休みたいという気持ちを抑えてまで辿り着いた場所は、
「リーフさん……まだ、起きていますよね?」
名前も何も書かれていないドアの前であった。
「どうしても話をしておきたい事があります…これは、私が失念していたのですが……」
どこの部屋も、同じドアの作りなのに迷う事無くここに辿り着いたのは、
「霊力に目覚めてしまったんですね」
リーフの霊力に、呼応する事が出来たからであった。




