異世界のアフレクションネクロマンサー141
見捨てたいと思っていないが、だからと言って街の長になるというのは、二つ返事で受けられるものでもない。
「それで、構わない……ただ、私の意志としては君に、街を統べて欲しいと願っている事を覚えていてくれ」
「覚えておきます」
決して話半分ではなく、後釜になって欲しいという願いを持っている事を理解した上で、それ以上の事は話し合わずに講堂を後にする。
フレン達は、みんなからの報告等もあるだろうから、このまま講堂に居続けるのだろうが、礼人に出来る事はここには無い。
やれたとしても、みんなが頑張っている姿を見て、流れを知るという事も出来るかもしれないが、
(後方で援護に回るという事は無いだろうな)
鉄騎兵の事を考えれば、礼人は最前線で戦う事になる。
勝利の行方のカギを握ると言っても過言では無い礼人が、後方支援で遊んでいられる訳が無い。
数日後には戦場に立つというのなら、無駄な事は出来ない。
来た道を引き返し、仮住まいとはいえ自分の家に帰ろうとすると、
「フレン様が将軍になられたそうだぞ!!」
「フレン様が!?」
「本来なら街を上げてのお祝いをしたい所なんだが、フレン様が将軍になるための試練として、戦場で功績を上げなくてはならないんだ」
「もう戦争に!?」
「家庭が苦しいのは分かっているが、我慢をして戦争の準備をしてくれ……後から本国の物資が届くから、ギリギリまで詰めて欲しい」
「……分かりました。フレン様とこの街と…あなたの為に……」
「すまない……」
帰り道から聞こえた、とある家族の会話。
(下品なマネをしたな……)
足を止めて、彼ら家族の話に耳を傾けてしまった。
止めた足を前に出し、今度は歩みを止めないように進むと、あちらこちらから先程の家と同じ会話が聞こえて来る。
どこの家でも、フレンが将軍になる事を喜び、戦争が再び始まる事に覚悟を決める。
騒がしく脈動していく街。
街全体が一つの意志となって、一つの命になる中で、
「戻って来たか……」
一ヶ所だけ静かに佇む、フレンの屋敷へと戻って来た。




