異世界のアフレクションネクロマンサー133
だからこそ、赤い液体を渡すという判断は、最善の一手になるのだが、
「君が言うのなら、そうなのだろうが……もしも、完全なる赤い液体を産み出せるようになったら対抗出来るのかい?」
「……ちょっとズルい言い方になりますが、完全な赤い液体を産み出すには時間が掛かるのは、リミィさんの技術を未だに求めている所からも分かります……私個人が、完全な赤い液体を使用している機銃車を相手にするというのなら問題ありませんが、戦略的な意味でだと厳しくなります」
懸念するべき事はあった。
粗悪な赤い液体だろうが、赤い液体だろうが、礼人なら正直そこまで大差のある話では無いが、あくまでも礼人は一人しかいない。
機銃車等が、粗悪品な赤い液体を使う事でトラブルが起きる事を予想していて、数を揃えても壊れてしまったり、長い運用は出来ないという問題に見舞われれば、想定よりも運用が出来ず、局地的部分での使用に限られるはず。
そうなれば機銃車等の兵器が、礼人の目が行き渡り、手を伸ばせば簡単に処理出来る所にある事になるが、これが完全な赤い液体を使われて、トラブルが一切合切解決してしまった場合が問題になる。
兵器の機動力を考えれば、礼人の目の届かない所や、手を伸ばしても届かない所にも次々と送られるのは当たり前の話で、その送られた兵器を追って対応していては犠牲者が出る。
「懸念されている通り、赤い液体を渡した時点でカウントダウンは始まります。自分が対応出来無い程に戦力が膨らむ前に、終わらせるというのが勝利条件の一つです」
自分一人、自分の周りの人達を救うだけなら、いくらでも時間を掛けられるが、他の街に住む者達すら守るというのなら、時間を無駄には消費出来ない。
礼人の話を聞いて、ベルガとビレーは目を合わせて、
「オヤジ…しゃあないよな。分かった…フレンのやり方と、アフレクションネクロマンサー様のやり方でいこう」
この判断がみんなを守る一番良い判断だと納得する。
目前とまでと言わないが、見える距離でチラチラと姿を見せる死神から、二人が自分の運命を掛けてでも尽力してくれるというのなら、共に歩む覚悟を決める。
「そしたら、戦争の準備をしないとな……鐘を鳴らして来る」
ビレーは、大きな体を重そうに「よっこらしょっ」と持ち上げると先に食堂から出て行き、
「今回の件は、まだみんなには話せない。もしも、この話をして反旗を翻しても殺されてしまう」
「分かってる、物事には順序があるからな。今回の話は、拠点奪還の話だけだろ」
フレンとベルガも立ち上がる。




