異世界のアフレクションネクロマンサー129
「そんな、馬鹿な事を信じろと言うのかフレン……」
「そうだ、その馬鹿な事が起きうる事態に陥っている」
突き付けられた事実に、ベルガは頭を振って信じられないと、信じたくないと言うが、
「……なるほど、全てに合点がいく」
「オヤジ……」
言われた瞬間は、ビレーも信じたくないと思ったが、常に最前線で命令を受けて来たビレーには、この仕打ちを受け入れるだけの理由を持っていた。
「ワシは前々から不思議に思っていた事がある。滅茶苦茶な進行作戦を行うのに、時には冷戦期間が与えられる事を。冬となって凍死する者を出してでも山越えをさせる時もあれば、春になるまで進行を止め、夏の暑い日差しで食物が腐ってひもじい思いと病気で苦しむ思いをさせたかと思えば、秋になってから進行を再開する時もあった」
ビレーの中で思っていた、腑に落ちない事。
愚者のように自分達の事をぞんざいに扱い、どれだけ死人を出そうが戦争をさせ続けるか思えば、賢者のように季節の移り変わり目を読んで、兵力を温存させる奇妙な判断。
「アフレクションネクロマンサー様の言葉を借りるなら、戦争をするのに最低限必要な数は百人、世界を維持するのに超えてはならない数を三百人とし、その中で増減を行うが戦争は戦争だ。思った通りにその数の中で調整出来無いから、最低限の数に近付けば温存を始め、越えてはならない数に達しそうになれば間引きを始める……か」
戦争に勝ちたいというより、戦争をさせ続けたいのではと思わせるような滅茶苦茶な行為も、世界のバランス調整と考えれば納得も出来る。
「でもよ、オヤジ。そんな事をするより、無理をしてでもリザードマンを絶滅させれば……」
「出来なかっただろ。長い年月を掛けても」
「そう…だよな……」
簡単な理屈を言えば、リザードマンを絶滅させれば事は済むかもしれないが、そんな簡単に済むはずがない。
「そして、今回の長い期間の停戦は、本国の戦力を整えつつ、最終決戦をする為に我々の兵力を増強させたのだろうな」
「最終決戦?」
「そうなんですね…この世界は、もうその段階まで来てるんですか」
ビレーの推測に、今度は礼人が乗っかる。




