夢の中68
鋼鉄の巨人は森の奥で起きているのが奇跡なのか、異常なのか。
それを見極めるために見通しのきかない森の奥を見つめていると、本来なら暗く、光の無い森の奥の先で、木々の隙間から小さな白い光が見えたかと思うと、小さな光は一瞬強く輝く。
強く輝いた小さな光が何なのか?
それを遠目から見ていると、小さな光は次第に大きくなっていき、
(…………!?)
段々と大きくなっていく光が大きくなっているからではなく、自分の方へと迫っているからであると気付いた時、とっさに右腕を前に出して体を庇うが、
『ジュウゥゥゥゥ!!!!』
冷たい水の中に焼石を放り込んだかのような焼ける音が聞こえたかと思うと、右肘より先が消滅した。
それはまさに一瞬の出来事。
自分の下へと飛んで来た光は、怨念の霧を一切物ともしないどころか、光が通った所だけ消しゴムで消したかのように怨念の霧は完全に消滅している。
何が起きたのか?
敵の増援?
それとも兵器?
何も分からない?
何が起きたのかは分からないが消えた右肘を再生さなければ……
(…………!?)
再生さなければと思った時であった。
悪霊の霧が消え去った所から、凄まじい力が動くのを感じて無意識に小さな光の方を見ると、小さな光はゆっくりと揺らめいている。
ロウソクの火のように揺らめく小さな光だが、
(あれは何なんだ……)
一度気付くとそれが異常なものだと分かる。
その光をマナだと思ったがそれは正しい……しかし、何か違う力も感じる。
似て非なる物……知っている物に、何か違う物が混ざっている。
得体の知れない何か……
鋼鉄の巨人は右肘から先を再生させながら、無意識に足が後ずさる。
森の奥で小さく揺らめく光が、次第に大きくなる。
それはまるで先程の光のように……
ゆらゆらと揺れていた小さな光は、近付いてくるほどに陽炎のように周囲を揺らめかせ、まるで身を焼く程の熱い熱風のようなマナらしきものを感じる。
ふとっ、この謎の力が自分だけでなく敵にも及んでいるのかと思って視線を落とすが、敵はこの信じれらない力の影響を受けている様子は無く、ただ雪の上に寝転がっている。
(一体何なんなのだ……)
自分に対してのみ力の牙を向ける何かに、恐怖を覚えるのであった。




