異世界のアフレクションネクロマンサー123
「大切な人が命を張ってくれたお陰で、自分も仲間も守られて……命の餞別を貰ってからは、私がその役目を全うしているんです」
「そうなのか」
それは自分と似ていた。
甘える親を戦場で亡くし、自分を支えてくれていた妻も亡くなり……自分に残された娘の面倒を見ようにも、与えられた立場がそれを許さない。
そして彼もまた、甘えられる相手を無くし、与えられた役目によって甘える事が出来ない。
二人して、立場というしがらみにがんじがらめにされて、息苦しい思いをしている
彼がマジマジと、リーフがビレーさんに慰められているのを見ているのは、甘えられない自分の立場と、甘えられる相手を失ってしまって、甘えられないから羨ましくて堪らないのに、
(我慢強い子だ)
目の前でキャンディを舐めている子を眺めながら、自分も分けて欲しいと泣き喚く事無く、相手の事を甘ったれと馬鹿にする事無く、羨ましい光景だと唇を嚙みしめながら微笑んで、血を舐める。
言い難い苦しみに耐える相手に、自分の父親としての面目無さを嘆き、たった一人で異世界から来て、孤独と隣り合わせな彼に嘆く等恥知らずも良い所で、
「すま……」
「おーい、フレン」
配慮の足りない事をしてしまったと謝ろうとしたが、
「水を持って来たぞ。リーフが落ち着いたら飲ませてやれ」
ベルガが水を持って来てくれた。
ビレーと一緒に戻って来なかったのは、自分達の事を気遣って水を貰いに行ってくれたからであり、
「助かるよ」
自分達の事を気遣ってくれるベルガに感謝しながら水を……
「あっ……」
水を受け取ろうとしたが、礼人と話しをしていた事を思い出して、慌てて彼の方を振り返ると、優しく微笑んでいてくれていた。
同じような立場で、同じ心境であると思ったが、
「そうですね。もう少ししたら落ち着くでしょうし、そうしたらリーフさんも交えて話し合いをしましょう」
似て非なる物であった。
確かに自分には甘える相手はいないが、
「どうしたんだ彼は?なんか、雰囲気がおかしくないか」
「あぁ…そのな……」
自分には支えてくれる者達がいる。
こうして気遣って水を持って来てくれるのもそうだが、
「落ち着いたかい、リーフ」
「ぅ…うぅ……」
あぁだこうだ思ったとしても、こうやって娘の母親代わりをしてくれるビレーさんがいる。
自分の苦しい立場を理解して支えて貰える自分と、
「気にしないで下さい。人が支え合う姿は素晴らしいと思って」
独りぼっちの彼が、一緒な訳が無い。




