異世界のアフレクションネクロマンサー121
ビレーに声を掛けられた礼人は、今日一日、重責によってクシャクシャに険しくした顔か、未来を憂いて悲壮に満ち溢れた顔かの、喜怒哀楽の「怒哀」しか浮かべて来なかったが、ここで初めて頬が緩む。
「無事に帰って来れて、良かったですな」
その緩んだ表情を見たビレーは、無事に帰って来れた事に対する喜びだと思って、無事だった礼人を労ってから、
「何があったんだい」
リーフに何があったのかを聞く。
息子のベルガが慌てて呼びに来た訳では無いので、命に係る一刻も争うような状況では無いのは察していて、フレンが自分を呼んだというのは、長年の付き合いから父親代わりをして欲しいのだろうと予想は出来るが、
「余程、屈辱的な所を見せられたのかい?」
向こうで何が起きたかまでは分からない。
普段ならフレンだけを連れて来いと言うのだが、今回リーフまで連れて来いと言ったのは、フレンが罵倒されている所をリーフに見せて、辱める為だったのかもしれない。
街の為とは言え、フレンが罵倒を受けながら必死になって頭を下げている所を見せられては、内心が穏やかなはずも無い。
向こうで何があったかは予想出来たが、予想は予想、何があったのかしっかりと聞いてから、リーフを慰めようとしたが、
「先に、リーフさんを慰めてあげて貰えませんか?話は、それからの方が良いと思うんです」
「ふむ……分かった、とにかくリーフを慰めれば良いんだな」
アフレクションネクロマンサー様が首を横に振った瞬間、事は自分が思っている以上に深刻で、自分の予想で慰めるのはリーフの感情を逆撫でするかもしれないと心構えをして、
「入っても良いかい?」
「ビレーさん、お願い出来ますか」
リーフの声では無く、フレンの招き入れる声を聞いて、声を発する事も億劫になるほど心を傷付けられたのかと、慎重に籠のドアを開けるのであった。




