異世界のアフレクションネクロマンサー120
「……いえ、フレンさんは立派な父親です。リーフさんの頭を撫でてあげたじゃないですか?もし、家族間の仲が上手くいかないというのなら、それは戦争のせいですよ」
「ははっ…私が慰められていたら世話無いな」
「そんな事は無いです」
父として娘を慰められないと嘆く姿は、礼人にとって、
(気持ち悪い……)
吐き気を催す気持ち悪さがあった。
礼人にとっての愛は、家族ならじいちゃんとばあちゃん、後はアニーさん達、他人から与えられる物だと無意識に感じている。
もちろん、頭の中ではフレンのように親が子を愛する家族があると分かっているのだが、
「すみません、フレンさんでどうしようもならないなら、私は用無しですよね」
親から子に与えられる愛は、どこか打算を感じて受け入れられない。
優秀な跡継ぎだとか、自分の思った通りに育って欲しいとか……親というのなら、子供を育てる以上はある程度の計算をして育てるのは致し方無いのだが、礼人の場合はその計算が露骨であった為に、
嫌悪感がとんでもない事になっていた。
それはあくまでも、礼人の育った環境がそうさせるだけなのだが、
「いや、君も……」
「外の空気を吸いたいです」
籠の中に漂う家族の愛の臭いが、腐臭のようで耐え切れなくて、フレンの言葉を聞こうともせずに籠から降りて森の空気を吸って、頭の中で煙っていた愛の腐臭を吐き出し、
「最低だな……」
自分が受けれなかった愛を受けているリーフを、侮蔑している自分に嫌気がさす。
自分でも分かっている事なのに、受け入れられない……血の繋がった家族で性行為をするような……愛しているからと言って、越えてはならない一線を越えた倫理観に触れる生理的な気持ち悪さを覚えてしまう。
「仕方無い事さ」
こればかりは死んでも治らない、しょうがない事だと割り切る。
自分が死んで、誰かの欠片になる事無く生まれ変わり、無償の愛を授かったとしても、こればかりは変わらない……そんな事を思いながら、森の景色をボーっと眺めていると、
「アフレクションネクロマンサー様!!」
「ビレーさん」
ベルカに呼ばれて来た、ビレーさんが自分の事を呼ぶのであった。




