異世界のアフレクションネクロマンサー118
会話が終わった籠の中で静かにしていると、
(運命が…回る……)
車輪がガラガラと回るのを感じる。
(……地獄が待っているのか)
ガタガタと揺れながら止まる事無く走る籠は、自分の事を処刑場に連れて行く馬車を連想させて気分を悪くする。
何で、そんなイメージが浮かぶのかと思ったが、処刑される人が見せしめに馬に乗せられて、大衆の目に晒されながら、処刑場に運ばれるイメージが、籠の中とはいえ、戦場という地獄に運ばれる自分と重なったからであろう。
(嫌なイメージだ……)
そんな死を連想させるイメージを払拭し、少しでも良いイメージを思い浮かべようと外の景色を見るが、空に上がって世界を照らしていた太陽は光を失い、夕暮れとなっていて、
(街に着く頃には、夜になる……)
街に着いた時には、光を失った暗い闇の中にいるだろう。
未来を占うタロットカードのように、運命を示唆されているようであったが、
(分かってます……その運命のカードを破り捨てろと言うんですよね)
自分の中の残り香であるアニーさんが、不吉なタロットカードの結果に抗う希望になる。
決して停まる事無く、地獄へと回り続ける運命から逃げる事無く、光を失った世界を疾走すれば、
「街が見えて来ましたよ!!」
御頭が大きな声を上げて、街に辿り着いた事を教えてくれる。
「帰って来ましたね……」
「あぁ、我々の街に帰って来れたな」
御頭の声に誘われて外を見ると、明かりが灯る街が見えて、
(少し…考えすぎたな)
自分の中の悪いイメージは、闇に包まれた街の光景が浮かんでいたが、実際には松明が明かりを灯す、命の息吹を感じる事が出来る街で、心の中が安堵する。
勝手に地獄を連想して苦悩していたが、その幻想は所詮は幻想であると分かると、
「あの命を守らないといけない……」
街に灯る光が希望となり、
「ありがとう……君のその気持ちは、何があっても希望だよ」
礼人の立ち向かう希望が、フレンの希望にもなる。
場合によっては袂を分かつ相手かもしれないが、それでも同じ素材で作られた袂を持つ同志。
分かつ事になって、違う道を行く事になっても同じ気持ちで居続けてくれるはず。
少し寂しい気持ちにもなるが、自分に万が一の事があっても街の人達を導いてくれるなら、これ程ありがたい話は無い。
街まで辿り着いた籠は速度を落としてゆっくりと進み、停留所に着くと、
「皆の者!!ご苦労だった!!」
「ベルガ様!!」
そこには、ベルガが待っていてくれた。




