異世界のアフレクションネクロマンサー116
リミィは、この世界の厄介事に巻き込まれるのが嫌なら、自由に生きて良いと言っていたが、
「我々はどうしたら、街のみんなを守れるのだろうか……」
(我々の中に、自分も含まれていますよね……)
この世界の厄介事から逃げるというのは、目の前で苦悩し、命の危機に晒されているフレンさん達を見捨てる事になる。
「とりあえず、赤い液体の確保はしましょう」
「しかし、それをしたら……」
「勘違いされてますね。我々がするのは、赤い液体の確保です……引き渡す前に、やりたい事があります」
「それは……?」
彼女が望んだ、命ある者達全てに、一度は生き延びるチャンスを与えるという意思を引き継ぐ事は無かった……が、
「お忘れですか?私はアフレクションネクロマンサー、死を司る英雄ですよ?赤い液体を調べれば、自分のモノにして、より改良する自信があります」
離反した後の、自分の側に集ってくれた者達を守り抜くという想いは引き継いだ。
「離反するのか…我々も……」
震えるフレンの言葉に、礼人は無表情のまま頷き、
「みんなを守るというのなら、それしかないですね。本国の人達があなた達を捨て駒にするのと同じように、我々も本国の人達を切り捨てるしか」
自由に生きて良いというのなら自由に生きる……自分の大切な人達を守るために、本国のエルフも貴族も、リザードマンもリミィの国の者達も皆殺しにする。
今なら、リミィの気持ちが良く分かる。
幸せに生きていける人が、少しでもいて欲しいと願いながらも、生きる為に必要な世界が沈んでしまわないように、魔王になっていく事を。




