異世界のアフレクションネクロマンサー104
普段はどれだけ踊り散らかそうとも、気にも留めないのに、
「……赤い液体に付いて、君はどこまで聞かされている?」
リミィがどのように、踊ってみせたのかを聞いて来た。
もちろん、嘘を付く事も出来ずに、自分が知りうる事、聞かれた事を全て答えて難を逃れたが、
「何を知ってしまったんだ……」
手の平で踊らずに、踊ってるふりをして……リミィは手の平の上を隅々(すみずみ)まで探ったのだろう。
一本一本の指先を、指の間も、手首の端の方まで何かあるのではないかと……そして、見付けてはならないものを見付けのだろうが、それでも彼女には赤い液体があったのだ。
「彼女の処遇は君達に任せる。殺してしまっても、捕えるでもどちらでも良いが……そうだな、赤い液体は役に立つ。急ぎでは無いが、そのうち手に入れてくれ」
我々ほどでは無いが、上の方々も赤い液体を所望された。
赤い液体は上の方々にも魅力があり、それを献上して、自ら懐柔されることを宣言して忠誠を誓えば、側近として置かれたかもしれないのに、リミィは反逆者になる事を選んだ。
「君は……」
あの子が望んだ世界は、エルフ、リザードマンだけでなく、エルフに協力してくれるオーク達等の他の種族達も、みんなが幸せに生きていける世界。
「美しい夢を見過ぎたんだ」
誰もが、幸せに生きていける世界。
響きは美しく高潔であるが、実際にその夢を叶えるというのなら、リザードマンと共に生きるのが嫌だと言うエルフ、エルフと共に生きるのが嫌だと言うリザードマンだけでなく、エルフ族以外の存在を見下す者を根絶やしにしなければ、差別意識は永遠にくすぶる。
美しい夢を捨てないというのなら、多くの者を殺した血で真っ赤に染まる大地で、勝利の雄叫びを上げなければならない。




