夢の中65
「まぁ、私はこの世界に来た初代ではなく世代を重ねた者だから、煩わしい話位にしか思っていませんでしたがね」
一方的に話し掛けられることはチンプンカンプンで、どう思えば良いのか分からなかったが、胸だけがどんどん苦しくなっていくのは分かる。
口を塞ぐのが意図的にしているというのなら、自分が叫んで鋼鉄の巨人にバレないようにするため?
「まぁ、そこら辺の話は置いといて、本来霊力というのは他人から授かることは出来ません。普通の霊能者が、みんなから霊力を集めても一時的に身体が向上したり、霊力が一時的に強まる程度でしょう」
矢継ぎ早に続けるアニーの話よりも手を離して貰いたくて、振り払おうとしてもどんどん増していく胸の苦しさがそれを許さない。
「しかし、私の故郷に来た霊能者こと、アフレクションネクロマンサーは他人の霊力を自分の物にする特別な力を持っていました。その力を利用してエルフやオーク達の死を吸収し、死んだ者達の魂すらも扱ってみせました」
息を上手く吸えなくて息苦しい胸が次第に熱を帯び始める。
「二月さんとあなたが血筋関係にあったからこそ霊力の結合が出来たと思ったのですがですが、もしかしたらあなたにはアフレクションネクロマンサーか、それに近い素質があるのかもしれません……」
苦しみで締め付けれられていた胸は、次第に帯びていく熱の方が苦しくなり、
「礼人……あなたの霊力を吸った二月さんはとても強い霊力を発現しました。けれど、あなたはあそこまでの力を発現させられませんでした……何故だと思います?」
何を言われるのだろうか?実力の差?才能が無いから?
「二月さんは自分の命を全てを燃やし、その上であなたの霊力を少しばかり借りて戦ったのですよ……あの時の蝶が二月さんの命そのものと言って差し支えないでしょう……」




