異世界のアフレクションネクロマンサー91
ニードゥスの放った槍は、間違い無くアフレクションネクロマンサーの懐に入り込み、脇腹から心臓に届く一撃であったのだが、
「そうか…ならば気にしなくて良い」
心臓を貫く事無く槍を引く。
「はい……」
手加減はしていない…間違い無く、急所を貫く一撃であったが、
(自覚が無いのか、この子は……)
放った一撃の所に心臓は無かった。
(この子を形成した人物を知りたかったがな……)
ニードゥスは、ここまでのアフレクションネクロマンサーとのやり取りで、この子供が自分と真正面から話し合えるのは、誰かがこの子に施したというのは、簡単に想像出来るが……
(ふっ…アフレクションネクロマンサーを人工的に創るか……)
その思想自体は、珍しくない。
どの派閥でも、一度はアフレクションネクロマンサーを人工的に創るという発想を、夏休みの自由研究程度の感覚で思い浮かべるが、それを簡単に思い付いては結局は成功せず、ちょっとしたお遊び程度で終わらせてしまう。
(どこが成功させたのだろうな)
なぜアフレクションネクロマンサーを創るのが難しいかというと、定義というものが無いから。
ただ魔力が強ければ良いのか?ただ出生が良ければ良いのか?
年齢はどうする?
若き才能溢れる、これから成長していく姿を待望する若葉のような少年が良いのか?それとも、齢を重ねて大樹のようにどっしりとした賢人が良いのか?
アフレクションネクロマンサーもどきという、いわゆる担ぐ神輿程度ならいくらでも、やりようが有るという事。
現に、反旗を翻してアフレクションネクロマンサーを名乗った単なるエルフでも、中々の腕前を持っていて、少し秀出た才を持っていた程度にも関わらずに、周りの者は心を躍らせる。
もちろん、そんな中途半端なアフレクションネクロマンサーもどきが、自分達の相手になる事等無く。
アフレクションネクロマンサーもどきの結末は、我々の足元に辿り着く事無く始末される。




