夢の中64
出来るだけ……出来るだけ鋼鉄の巨人から離れる。
ルートなど一切無い、足跡を辿られればすぐに追われる一直線で。
それが分かっていても、アニーは礼人を連れて真っ直ぐ逃げる、真っ直ぐ真っ直ぐ出来るだけ距離を稼ぐように……
「アニー……」
雪が積もる森の中は黒い霧に満たされておらず、息をすると少しずつだが体の穢れが薄れていく。
いつも自分を助けてくれるアニーに連れられて、その場の窮地から逃げ出せたことで礼人の中で再び希望が湧くが、
「アニー…みん………!?」
逃げ出せたのは二人だけ、アニーなら何とかみんなを助け出せると思った礼人はアニーに何とかして欲しいと懇願しようとしたが、アニーは事もあろうに声を出した礼人をその場でおろすと、口を強く塞いだのであった。
折角アニーが正気を戻して自分を助けてくれると思ったのに……
礼人はもがこうとしたが、弱った体ではアニーの力に抵抗する事も出来ず、されるがままに口を押さえられると胸が苦しくなる。
このままアニーに殺される……
そう思うと何だかそれも運命なのかもしれないと、受け入れる事も出来るような気もした。
親から見放され、そこで育ててくれた人……生かしてくれたこの人が自分を殺すのなら……苦しくなる胸も少し我慢すれば……
「何を思い違いしているんですか?」
死を受け入れようと生気を失っていく礼人に対して、アニーは不敵な笑みを浮かべていた。
「二月さんにも話してはいなかったんすけどね。私はエルフの血筋…異世界のエルフなのですよ。その世界ではアフレクションネクロマンサーという、この世界からくる英雄を探していたんです」
アニーの突然の告白は唐突過ぎて、誰が聞いても突拍子が無くて理解出来ない。




