異世界のアフレクションネクロマンサー88
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「あれは……」
望遠鏡の中で行われた処刑に、フレンは驚愕しながら説明を求めてニードゥス様の方を見る。
檻の中に閉じ込められていたリザードマンの側に執行人が近付き、少しのやり取りをしている間に、例の戦車みたいなものが準備された。
それは、戦車という物の下の部分だけを用意し、その上には……
「ガトリング砲もあるんですか……」
「ガトリング砲?」
歯を食いしばって、望遠鏡の中に映る物を見ているアフレクションネクロマンサー様。
苦虫を噛み潰して苦々しくしているのに、それでも歯を強く喰いしばるのは理解出来る。
やり取りをしていた執行人の態度が気に喰わなかったのか、リザードマンは執行人の胸倉を掴んで投げ飛ばすと、それを合図にし、ガトリング砲なる物からマナが一定のリズムで発光したかと思った時には、リザードマンが砕けた。
鱗が弾けて太陽の光で輝いたのは一瞬、その後は一瞬で血飛沫が上がって、リザードマンが一瞬で赤く染まって、一瞬で死んだ。
全てが、一瞬だったのだ。
そこには、順序も無ければ段取りも無い。
ガトリング砲から、何かが撃ち出された瞬間に、全ての一瞬が重なり、その重なった一瞬の重さに耐え切れずリザードマンは崩壊した。
フレンは、さっきの戦車を見た時は、オークでもあの程度なら出来ますと言ったが、
「凄まじいだろ?これがアフレクションネクロマンサー君の世界で行われた戦争で使われた兵器だ」
こんなのは、オークだろうがエルフだろうがリザードマンだろうが、誰にも出来ない。
「アフレクションネクロマンサー様……こんなのを使って戦争をされてたんですか?」
ニードゥス様が言うのだから間違い無いのだろうが、こんなのを使って戦争なんかしたら……
「そうです……あのガトリング砲のせいで多くの兵士が死んで、ガトリング砲の脅威から逃れる為に塹壕を掘って、身を隠すようになって戦争は膠着状態になりました」
それはそうだろう、あんな物があっては命等、ゴミクズのように……
「だからか…だから戦車が作られたんだな」
あれから、身を守る為には分厚い盾が必要になるが、それを運ぶとなるとそれだけでも大掛かりになる。
しかし、最初に見せられた戦車なら身を守りながら、塹壕にいる敵も鎮圧することも可能のはず。




