異世界のアフレクションネクロマンサー84
互いに、その存在だけを覚えているけれど、どこか遠くの彼方に置き忘れてしまった者達が、この時代にいる。
一人は優しき心で英雄となり、もう一人はその気高き心で伝説となって……そんな人物が同時に、この世界に、同じ空の下にいると思うと、雲っていた心の雲に少しだけ太陽の光が差し込んだ気持ちになったが、
「あの……」
檻の中に閉じ込めているリザードマンに声を掛けられて、これから自分がしなければならない事を思い出すと、心に差し込んだ太陽は消えて、心の中に雨雲が広がる。
いつもの、処刑という名の虐殺を指示しなければならない事に辟易するが、自分に与えられているのはあくまでも処刑を執行する権利であり、執行を取り止める権利は無い。
戦場にいた頃は、リザードマンは敵だと思って、殺す事に何一つ思う事等無かったが、
「俺は…あなたを恨んだりしません……」
「…………」
こうやって、リザードマンと会話をしてしまったのがいけなかった。
「きっと…俺の運命はこうなると……ここで終わると定められていたんです……」
檻の中から遠い遠い空を眺める彼は、とても穏やかで、
「これを…お願い出来ませんか?」
戦場で出会う時の、相手を殺す為に細ばった瞳では無く、丸い愛嬌のある瞳をしている。
「これは…ペンダントかい?」
「自分の家に代々伝わる物です」
彼から手渡されたのは、水晶のペンダント。
空に輝く星のように美しく、空に浮かぶ星をモチーフにされた水晶のペンダント。
彼が言うように大事な物であるのは、その精密な造形から簡単に理解する事が出来て、
「分かった……この後、必ず君の下に返す。決して、ぞんざいに扱ったり、誰にも盗ませたりしない……約束だ」
ペンダントを受け取ると、大切に手の中に握り……
「いえ、お願いしたいのは……ペンダントを友達に渡して貰う事です」
辛いお願い事をされてしまった。




