異世界のアフレクションネクロマンサー83
(ゆっくりと休むと良い)
多分だが、黄金のドラゴンに目を掛けられたのは、ドラゴン族という頂点から更に飛び立った存在と同じ光を扱ってみせたから、
(俺は……)
最後に力を振り絞って何かを、何でも良いから聞き出そうとすると、
(君は……ドラゴンを越える者になれる)
黄金のドラゴンからの一言を聞いた途端に、意識が遠退き……
「もう、時間になる」
「時間ですか……」
次に目覚めたのは、ここだった。
檻の中に閉じ込められて……これから自分がどうなって行くのか想像し、
「ドラゴンを越えられるか……」
檻の柵越しに空を見上げる。
こうやって、逃げようの無い場所に、エルフに捕らわれているのは、黄金のドラゴンが自分を売った訳では無いのは、あの時の「ドラゴンを越える者になれる」という言葉と、あれだけ焼かれた体の怪我が元通りになっている事を考えれば、あの後に黄金のドラゴンが治療をしてくれたのは予想に難くなく。
もしも、最初から自分を売るつもりなら、あのような言葉を掛けたり、治療などしてくれていない。
ドラゴンを越えられるという、あの言葉もきっと本心から言ってくれたのだろうが、運悪くこうなってしまっては……
「ドラゴン?」
「えぇ…エルフのアナタ達でも聞いた事があるでしょ?ドラゴンの伝説を……馬鹿らしいと思うかもしれないですけど、ドラゴンにやられたんですよ自分」
御伽噺となってしまった伝説の存在。
確かに実在したとは言われているが、それはもう風化してしまった話で、そんな事を言っていてはドラゴンなんて、子供話と笑われてしま……
「そうか…不思議な事もあるんだな」
「信じるんですか?」
笑われて馬鹿にされてもおかしくないのに、風化したドラゴンの名を聞いても、エルフは笑うことも馬鹿にすることも無く聞いてくれる所か、
「アフレクションネクロマンサーって知ってるかい?我々にとっての英雄……君達で言う所のドラゴンみたいな存在なんだが、今、この世界にいるらしい」
なんで、自分の戯言のような話を信じるのかを教えてくれる。
エルフも、自分と同じように空を見上げ、
「不思議だな……エルフにとっての英雄が、リザードマンにとっての伝説が同じ時に現れるなんて……何が起きているんだろうか」
嘘のような出来事に、思いを馳せる。




