異世界のアフレクションネクロマンサー73
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「うっ……」
どれだけ寝ていたのだろうか?
(ま…ぶし……)
久方に感じる、まぶた越しの光は眩しくて、目を開けられないが、それでも手は動く。
自分の顔を触り、口を触り、喉に触れて、胸を擦り、
「生きて…る……」
手を目に持って来て、指の隙間から世界を見る。
「牢獄…いや…これは……」
鉄格子で四方を囲まれているのは間違い無いのだが……外にいる。
空から注ぐ太陽の光から逃げるように、仰向けになっていた体を転がし、うつ伏せになって手に力を入れながら、足にも力を入れて立ち上がって、
「確か……」
自分が何をしていたのかを思い出そうとする。
自分の記憶の中を辿る……そこは、こんな光の届く場所では無く、太陽の光を誰よりもその身に受けようとする木のせいで、大地に光が届かない薄暗い森の中……
(良いか、目標はリディだ)
隊の指揮を執る者が、これから自分達が行おうとする事の再確認をする。
(今回、裏切り者のリディが、鉄騎兵を作る拠点に視察するという情報を捕虜から手にした。我々を裏切りるだけでも許されないというのに、己の欲望の為に秘宝を持ち出して、自らエルフに頭を垂れるという恥知らずまでしたリディを、生かしておくことは出来ない)
「そうだ…それが……任務だった」
秘宝を持って逃げ出したリディの殺害任務……その後も、部隊の指揮を高める演説が行われていたが……そこの記憶はもう十分なので、早送りする。
自分の身に何が起きたのかを思い出すのに大切な所を探す為、十秒毎に動画を飛ばす早送りのように記憶飛ばして行くと、記憶の映像がカクカクと切り替わる。
どこかに、事の発端が映っている記憶があると、記憶を飛ばして行くと、
「あっ……」
自分の心に引っ掛かった所で、再生が始まる。
(なぁ……)
(どうした?)
(俺達、生きて帰れるよな?)
(当り前じゃないか、戦争をしろって言われた訳じゃないだろ?)
(そ…そうだよな……)
(指揮官だって言ってたじゃないか。リディとエルフがやり合っているのに乗じて、リディを始末して、そのまま逃げる……それ以上の事は望んでいないって)
再生が始まった所にいたのは、一緒に軍に入れられた友であった。




