異世界のアフレクションネクロマンサー72
(もどかしい……)
フレンの言う通り、あのブリキの戦車ならどうとでもなるし、今日明日で現代の戦車になる事は無いとは思うが、これが数年も経てば、世界大戦後期の戦車になってしまう可能性もある。
(そうなったら、オークとかそんなの問題にすら、ならなくなってしまうのに……)
この先の事を知っているからこそ、何とか戦車の恐ろしさを伝えなければならないと、どう伝えるか頭をひねろうとしたが、
「さて、アフレクションネクロマンサー君。今度は、この望遠鏡を見てくれ」
ニードゥスがそう言うと、戦車が映る望遠鏡の隣を指差す。
(……まだあるのか)
この戦車が本命と思っていたが、まだ何かあるらしく、
「分かりました」
望遠鏡の中に映る物を見ろと言うのなら、見るしかない。
礼人は、隣の望遠鏡の前に移り、右目を望遠鏡に当てると、
「あれは……リザードマン?」
望遠鏡の中に映ったのは、鉄の檻に捕らえられているリザードマン。
「リザードマンがいる?」
本国にリザードマンがいる、それこそフレンにとっては衝撃的な事実で、
「ニードゥス様、なぜリザードマンがいるのです。オークの者達ですら、本国に足を踏み入れる事は重罪とされているのに」
リザードマンがいる事に怒りを覚える。
オークの「オ」の字すらいる事を許されない本国に、リザードマンがいるというのは……耐え難い屈辱。
歴戦の勇であるビレーさんだって、ベルガだって産まれてこの方、本国に足を踏み入れた事等無いのに……
「言いたい事は分かるが、何も客人として呼んでいるのではない。あのリザードマンには、これから酷い事をする事になる」
「酷い事…ですか……」
「酷い事」その言葉にフレンは、はらわたが煮えかえる。
酷いと言っても、森の中の塔と見張り屋敷の物珍しさに、ジロジロと見ていたオークが捕まり、有無も言わさずにその場で処刑され、決して本国に関わる事を許さないと、オークの死によって宣言された事があるが……それ以上に酷い事があるというのか?
フレンは、礼人の見る望遠鏡に何が映っているのか、今すぐにでも知りたくて、変わって貰いたくて、ソワソワすると、
「収まりがつかぬか」
ニードゥスは、フレンの気持ちを汲み取ると窓の望遠鏡を外し、
「君達も、望遠鏡を取り外したまえ」
礼人の横に立つと、礼人が見ているものを見始める。




