夢の中62
礼人は閉じようとしていた目を辛うじて、まるで眠るのを我慢する子猫のように細くしながらも声が聞こえる方を見ると、お腹を押さえながら体を縮こまっている仲間がいる。
「礼人…お前…力なら…………」
この黒い霧の中で力尽きようとしている仲間、力を振り絞って喋る声は次第にかすれて聞こえなくなるだろうが、何を言わんとしているか分かる。
「はや…く……………」
みんなの残された僅かばかりの霊力と命を吸えば、二月がくれた時のように結合することは無いだろうが、一時的に霊力は回復する。
その一時的な回復がどこまで持つかは分からないが、みんなを見捨てて逃げれば生き延びることも出来るかもしれない。
どちらにしても自分達は間違い無く死ぬ。
ならば、ここで礼人が生き残れば貴重な霊能者が全滅するのを防げ、後に続く仲間達に情報を伝えることもでき、仇を取って貰う事も出来る。
何とか礼人にはこの場から、助かるかどうかは分からないが、もしかしたら逃げている時に仕留められてしまうかもしれないが、逃げ出して欲しかったが、
「………………」
礼人は最後の気力を振り絞るのを拒否するように目を閉じてしまう。
決着は付いた。
唯一抵抗出来るかもしれなった少年は、出来るかもしれないという可能性だけを示しただけで、そのまま潰えた。
雪の上で震えること無く、ただただ生命を吸われていく子供。
同情の余地が無いとは言わないが、それよりも、
(この子供はアフレクションネクロマンサーになるのか?)
自分よりも弱い存在ではあるが、それはあくまでも子供であるからとも言える。
この子供が歳を重ねれば、異世界に跳んでまで来た自分達の探している人物になりうるかもしれない。
だが、そうでなければただ力を持った邪魔者でしかない。
鋼鉄の巨人は、雪の上で眠りに付こうとしている少年を連れて行くか、見捨てるか判断するためには時間が必要だと判断すると、
(周りの者達を始末しよう)
礼人の事をどうするか考える時間で、周りの者達を始末することを決めた。




