異世界のアフレクションネクロマンサー68
「それは…よろしいのですか?」
「もちろんだ……と言うよりは、是非とも君に見て貰いたい物があると言った方が正しい」
礼人の腹の具合は正直、これ以上は物を入れないで欲しいと言っている。
用意されたつまみの量は無かったが、酸っぱさと甘さの合わさった味わいが、胃をもたれさせた。
これ以上、胃の中に物を入れても処理し切れない感もあったが、
「よろしくお願い致します」
この先、用意される料理のフルコースを平らげる事は出来なくても、見るだけでも価値はあるはず。
ニードゥスの提案を飲むと、調子の悪い胃が、まだ食べさせるのかとムッとしたが我慢をさせる。
「それでは、場所を移そうか。君達も付いて来たまえ」
礼人が腹を括ったのを見て、ニードゥスが席を立つので、後を追う。
執務室から出ると、待っていた案内人が一緒に付いて来ようとするので、
「君は、ここで待っていてくれ」
それを制止して廊下を進み、乳白色の美しい大理石の階段を上がり、そのまま階段を上がって行くと、辿り着いたのは少し薄暗い部屋。
全面、夜をイメージした青を基調にした壁に、ドーム状の天井には夜の壁に見合うように星座を表した模様が描かれて、四方八方にある小窓に、一つずつ望遠鏡が置かれている。
(展望台……)
街の、敵を見張る見張り台とは違う、装飾の施された展望台はそれだけで凝っているのが分かる……が、この美しい展望台に来て何をしたいのか?
(国を見せたいのか?)
ここから見える物と言えば、この国の街並み。
ここまでの車の移動では、十分に堪能したとは言い難いから、こうやって見せて貰えるのはありがたいが……
「ここに、赤い液体があるのですか?」
「あっ…」
フレンが、礼人の代わりに話を振る。
もしかしたら、ここはリミィの部屋だった場所で、ここに何かしらの赤い液体の情報があって、調べて貰いたくて連れて来られてのかもしれない。
礼人は、ニードゥスと目を合わせて、それが答えたのか訴え掛けると、
「いや、それは違う。アフレクションネクロマンサー君、この望遠鏡を見てくれたまえ」
「これですか?」
ニードゥスは、フレンの問いは間違いだと指摘してから、一つの望遠鏡を指差すと、そこから外を覗くように促す。
一瞬、言われるがままに見て良いのか迷って、フレンの方を見ると、フレンは黙って頷いた。
「……分かりました」
フレンが何かあったら助けてくれるというのなら、礼人は従って望遠鏡に近付いて覗き込むと、
「これは!!」
望遠鏡を覗いて見えたのは、遠くの大地を走る戦車であった。




