異世界のアフレクションネクロマンサー64
ニードゥスと礼人の二人きりの談話……
「そういう事だ。自分の信頼している者からの言葉なら、信じられるのでは?」
その間に入り込んだリーフを邪険に扱うのではなく、助け舟から水を差し入れるのを許す。
「リミィさんは、私の世界に来ました……そこで言われたのが自分の代わりに、こっちの世界を救って欲しいと」
「代わりに?」
礼人は、リーフに差し出された水で、口の中で広がる酸味を放つ木の実を飲み下す。
リーフが差し出してくれた水はありがたかった。
あのままでは、口の中に入れられた木の実の酸っぱさで飲み込むことが出来ずに、吐き出す事も出来ずに下手な事を言っていたかもしれないが、
「いきなり私の世界に来て、こっちの世界に放り込まれたんです」
リミィが、亡くなっている事を喋らずに済んだ。
そのカードは、切るべき所で切らなければただの紙くずになるが、それで済むならまだマシ。
この強力なカードの効力は一度切り、それを「他の者」にも預ける等ありえない。
「ふむ…」
ニードゥスは、礼人の差し出した赤い水から少し渋みが出た事を感じる。
(嘘は言っていない…か……)
何かを隠しているようだが…リミィなら確かに、異世界に行ってアフレクションネクロマンサーを呼んで来ても何らおかしくないが……
「リミィは……残ったのかね?」
「はい」
ここでニードゥスの顔が曇る。
この世界の者達を誰よりも想っているリミィが、この世界に帰らずに向こうの世界に残るという判断……
「なぜかは……言っていたかい?」
「言ってません。追手が来たので、それを相手にしてくれましたから」
「そうか…ならば、さっきのリミィの離れた理由だが……」
異世界から、アフレクションネクロマンサーを連れ出した罪悪感からでは無いだろう。
彼女が残ったというのなら、何らかの事情がある……リミィの頑固さは自分が良く知っている。
少年が不安だと言って、着いて来て欲しいと言った所で、残ると言うのなら意地でも残る。




