異世界のアフレクションネクロマンサー62
(余計な事を言ったな)
「敵に奪われた拠点の奪還」という名目だけなら、礼人もどこか胡散臭いというだけで、終わらせていたかもしれないが……
「所で…二月君、何か聞きたい事があるようだね?」
「…………」
ニードゥスは、この感動的な場面に、水を差し入れて来る存在に気付かない訳が無かった。
「アフレクションネクロマンサー様……」
「遠慮することはない、言ってみたまえ。私は、君にも興味がある…そう言えば、安心出来るはずだ」
アフレクションネクロマンサーが、差し出した水。
フレンは、横から差し出された水を引っ込ませようとしたが、ニードゥスは横槍に出されたコップを掴むと、口に含んでみせた。
水を飲まれてしまった……飲まれる前に引っ込める事が出来れば、愛想笑いでもしていれば事は済んだかもしれないが、毒が入っているかもしれない水を、ニードゥスは躊躇わずに飲み干し、飲み干したコップを眼前に付き出されては、
「……ニードゥス様は、赤い液体の事をご存じなのですね」
水の中に、何を仕込んでいたのかを言わない訳にはいかなかった。
赤い液体という情報を混ぜた水。
ニードゥスは、口の中一杯に広がる、赤い液体の水を舌に転がして味わう。
(アフレクションネクロマンサー……伊達ではないな)
それは、何とも言えぬ味わい……まさか、見ず知らずの少年の方から、この刺激的な味わいを持つ物を差し出されて、飲まされるとは思っていなかった。
「なるほど…それについて答えるのは、やぶさかではないが……どうだろう、私からも君に質問をしていくのは?」
この刺激的な味わい……それで会話をしていくのは面白いだろうが、それだけでは少々味気ない……せっかくの刺激的な味わいを用意してくれたのだからと、ニードゥスは返礼と言わんばかりに、つまみを差し出して来る。
ニードゥスの差し出したつまみ……ニードゥスが長年の時を掛けて漬け込んで、口をすぼめてしまう程に酸っぱい木の実と、歯茎が浮いてしまう程に甘い果実が用意される事だろうが、
「……分かりました」
「ふふっ…良い度胸を持っているようだ……」
若年しか生きていない礼人は、酸いも甘いも嚙み分ける姿勢を見せてみせる。




