異世界のアフレクションネクロマンサー61
「君に重責を押し付ける形になるが…これはチャンスなのだ……もちろん、今回の作戦に成功したからといって、劇的に才ある者達の不当な扱いが変わる訳では無いが、それでも間違いなく、運命を変える一石となる……力を貸してくれるね?」
ニードゥスは、自分が見ている夢に、何の承諾も得ないまま、フレンを巻き込んだことに罪悪感を感じながらも、
「我々の為に……ここまで尽力を尽くして下さるニードゥス様には、感謝の念しか御座いません」
「ありがとう…」
フレンなら、自分の気持ちに応えてくれると信じていた。
「お父様……」
リーフは、ニードゥスとフレンのやり取りに、瞳に涙が溜まる。
常に虐げられ、苦しめられ……必死に生きながらえて来た。
生まれと血筋だけで、差別されて……それは仕方ない事だと、自分に言い聞かせて来たが、
「…君達、若い子にも苦労掛けさせてしまって、すまないと思っている……だが、この老体が朽ちる前に……君達が大人になった時には、幸せに生きられる世界を創りたい……そう、切に願っている」
ニードゥスの言葉が、リーフの心に響くと、リーフは我慢出来ずに瞳に溜まっていた涙を零してしまう。
それは無理の無い話、本国の重鎮である人物から、このような自分達を想う言葉を聞かされて、涙腺が緩まないはずがない。
その光景は、権力を持ちながらも、悪しき習慣を正そうとする識者に、その考えに殉ずる覚悟を示す従者……そして、二人の決意に感銘を受けて、感涙する少女……
それは、絵に描いたように美しく、物語の一説に出てきそうな光景であったが、
「…………」
一人だけ、つまらなそうにしている者がいた。
それは、自分だけが部外者だから拗ねているのではなく、また、自分だけ聡明な識者を疑うマネをして、ばつを悪くしている訳では無い。
(……納得出来ないな)
悪しき習慣を正そうとする聡明な識者ならば「赤い液体の確保」について、どんな考えがあって、確保しろと言っているのか、問いただしたくて堪らなかったからだ。




