異世界のアフレクションネクロマンサー59
鉄騎兵という悪魔のせいで大切な人を亡くし、出来損ないの人魚のせいで左眼を失う事になったが……それは結果論であり、リミィに敵対する形になったからだ。
あの日、あの場所に自分達がいなければ……別の所に、鉄騎兵が現れていたら……リーフ達を見捨て、あのまま赤いモノの流れに乗っていれば、あの出来損ないの人魚は、礼人の仲間になっていた。
憎しみを怒りを置いて……心をリーフ達の為にフラットにする、立場をゼロにして、第三者の目として考える……
(これが単なる種族間の争いで、種族間の滅ぼし合いなら、私は自分達の種族を守るために戦っていたでしょう……)
リミィの言葉が礼人の頭の中に響くと、礼人の蕩けかけていた瞳に光が戻る。
(そうだ…私は、まだ何も見極めていない……)
誰かに甘えたいという気持ち、頼りになる人に背中を預けたという気持ちを消して……
「いえ、あの化け物を殺せたのは、みんなの助けがあったからです」
相手の事を受け入れてしまいそうになっていた心に鍵を掛けて、一歩引いた所から、老人のエルフに対峙する心構えをする。
「ふふっ、そんな警戒しなくても良い。君をどうこうするつもりはない」
老人のエルフは、仔犬のように懐柔され掛けていた少年の瞳に、正気が戻ったことに気付き、そう唸るものじゃないと指摘し、
「私と君は互いに何も知らない。それを警戒するのは当たり前の事……そう言えば、私の名前を名乗っていなかったね。私はソクラス・ニードゥス。君の本当の名前は何て言うんだね?」
あくまでも、仔犬の唸りとして差し出した手を引っ込めることは無かった。
「…二月 礼人と言います」
こんなにも、悠然と構えて来る老人「ニードゥス」が仲間なら、とても頼りになる人物だと内心では思うが、差し出され手に尻尾を振りながら頬をすり寄せる気はもう無かった。
ニードゥスと礼人の巡り合いは終わったが、これで、全ての話が終わった訳では無い、礼人と会話を終わらたニードゥスは、フレンの方へと向きを変え、
「ところでフレン君。今回の功績でないが、君を将軍にしようと思っているんだ」
「お父様が!?」
「そう。今までは、必ず貴族達が指揮を執るという悪しき慣習があったが、私はそれを打開した思っていてな」
「反対の声は無かったのですか?」
「……恩を着させるつもりでは無いが、無理をした」
本題を始める。




