夢の中61
しかし、少年が作り出した光の球体は、先程の老人の放った光り輝く蝶より劣るもので、外側から焼きながら染み付き、その染み付く時ですら苦しみが浸透していく……あればかりは耐えることが出来ずに、のたうち回ってしまったが、少年の光の珠は表面は焼くものの、予め予想して受ければ我慢出来る。
我慢が出来たことによって、どちらが優で劣かは分かってしまう。
目の前の子供が周りの者を見捨てて逃げ出すのなら追いはしないが、立ち向かって来るというのなら話は別。
速さではどう足掻いても勝つことは出来ないだろうが、他の部分では全てがこっちが勝っている。
耐久力にものを言わせて光の爆発に耐え、相手の策略にわざと嵌まって付き合うだけの体力は、礼人がどれだけ頑張ろうと越えられるものでは無い。
越えられない壁は越えられない。
最初から諦めて逃げ出せば良かったのだろうが、みんなを見捨てて逃げる訳にはいかない。
もしかしたら越えられない壁を越えられるかもしれない。
越えられない壁が勝手に崩壊してくれるかもしれない。
そんな淡い期待をしてるから落ちたのだ。
そびえ立つ壁に、なまじ上るだけの力があったのがいけない。
高く高く登った者が越えられなかった時の運命は、高く登った分だけ絶望に深く落ちることになるのだから……
……分かってはいた。
みんなを見捨てて逃げれば間違い無く生き延びることも出来たし、何ならこの悪霊の霧の外でならまだ、戦いようがあったかもしれない。
だが、そんな事をすればみんなは殺されてしまう。
追い払う事さえ出来れば…もっと他の所で戦えれば話は違ったのに……
そんな事を考えている間にも礼人の霊力は次第に薄れていく。
冷たい雪の上に命を吸われていく感覚がひどく寂しく、このまま冷たい雪の上で氷のように冷たくなって自然に還るのかと、薄れていく意識の中を繋ぎ止めようともせずに目をつぶろうとしたが、
「礼人…私達の命を吸え……」
小さく、か細い声が礼人の耳に触れる。




