異世界のアフレクションネクロマンサー55
珍獣をジロジロと面白おかしく見る、楽し気な目では無い、
「お久しぶりです。フレン様。それにリーフ様もいらっしゃったのですね」
フレンとリーフの事は覚えているらしく、二人に対しては簡単な挨拶を済ませ、
「あなたが、アフレクションネクロマンサー様ですか。遠い所からわざわざ、ありがとうございます」
礼儀正しい言葉ではあるが、アフレクションネクロマンサー「様」に出会えて、感情に起伏が起きる事も無く、目は一切笑っていない。
守衛のエルフは、初めて見る顔を覚える為に、車の窓ギリギリまで寄って、刺すような視線で礼人を見る。
そのギリギリまで寄せて来る行為は、友好的とは言い難い態度ではあるが、
「いえ、この車という乗り物のおかげで苦労する事無く、ここまで来れました」
それは向こうの仕事なのだから仕方無い話、こんな所で、一々反抗していたら命が幾つあっても足りない。
礼人の顔をしっかりと脳裏に刻み込む守衛を、仕事なのだから割り切っていると、
「それでは、どうぞ」
運転席のエルフと守衛のエルフのやり取りが終わり、
「挨拶も、そこまでにしておきなさい」
「これは、失礼を……どうぞお進みください」
自分の顔を完全に覚えたのか、話し掛けて来た守衛はゆっくりと車の窓ガラスから離れて、門を開けると、開かれた門から車は敷地内へと入っていく。
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「お待ちしておりました」
何とも手間の掛かる事。
議事堂の横の駐車場に車を停めた所で、
「お忘れ物はありませんか?」
今度は案内人の出番という訳だ。
自分の世界なら、お迎えの人間なんて無駄な人件費だと糾弾されるかもしれないが、
「それでは。離れずに着いて来て下さい」
彼はお迎えのエルフであり、自分達が好き勝手に動かないかという見張りのエルフ。
見張りのエルフに連れて行かれるがままに議事堂の中に案内されると、外から見た時から三階の建物で大きいと思っていたが、三階まで吹き抜けにされた空間が美術館に入り込んだかのように静寂な空間を作り出す。
そして、アーチ形の天井には所々、スタンドグラスの天窓が備えられて天井を奇麗に彩り、大理石を敷き詰めた床は白い光沢を放ち、その上を赤絨毯が伸びているのだが、赤と白のコントラストが美しく映える。




