異世界のアフレクションネクロマンサー54
家柄の問題だと言われてしまえば、そこまでになってしまうが、
(歪だな……)
納得出来ない物がある。
リーフ達に救い出されてから、本隊に合流するまでに感じた、赤い空に上がった魂達を考えれば、何百人死んだことであろうか……
病が流行って、身分の低い者が大量に亡くなったのではない、戦場に出る兵士が何百人と死んだのだ。
戦争をする為であり、自国を守るための道具を大量に減らしていけば、いつかは貴族だけではなく、本国の者も戦場に、防衛戦だって自分の命を差し出さなければならなくなる。
いくら身分の価値が低いとはいえ、戦争という面で言えば、彼等の存在は決して無碍に出来るはずも無い。
功を焦る貴族達が馬鹿をするのは百歩譲って分かるが、その一番上の本国の人間まで馬鹿では溜まったものでは無い……
(いや…この場合は、馬鹿の方がありがたいのか……)
もしも計算された上で、フレン達が消耗品として扱われているとしたら、その算段は……
「まもなく議事堂に着きます。周囲を見渡すのは御止めになって下さい」
周囲を見ながら、思考を張り巡らしていた礼人であったが、運転手の「議事堂」という言葉に、周囲を見ていた視線を真っ直ぐに向けると、
「あれは……」
広大な敷地に、一層目立つ立派な建築物。
全てが建築物な、フレンの街ならそんなに目立たないかもしれないが、民家が立ち並ぶ本国では、広大な敷地に住居としての機能を果たさない、議会を執り行う機能を優先した建物は異彩を放つ。
広がる広大な敷地に、外からの侵入を許さないように、鉄格子で作られた壁が途切れる来なく伸びていて、見ただけで並大抵の身分である者は、立ち入る事を許さない重圧を与える。
重要な、重大な話し合いをするための場所の横を進む車は、自分の中の腹の中にいる礼人達に「立場をわきまえろ」と言うかのように、鉄格子の側を走る。
「間も無く、議事堂に入ります」
権力を持った者達が集いて話し合う場所。
木を基調に作られた建物とは違う、重厚なレンガを積み上げた建物は、さも自分が重要な施設である事を伝え、自信有り気にいるが、その態度に恥じる姿はない。
入り口の門に辿り着くと、左右に守衛室が二か所も備え付けられていて、車が近付いて来たのに気付いて、左右の門から一人ずつエルフが出て来ると、門の前まで誘導して車を停め、
「フレン様達をお連れしました」
「こちらに記帳をお願いします」
一人は車の運転手にチェックの為の記帳をさせ、もう一人が車の中を覗き込み、
「ようこそ、いらっしゃいました」
挨拶をしてくれるが、それはコミュニケーションを取るというよりは、三人の顔をチェックしているようであった。




