異世界のアフレクションネクロマンサー52
それは、妖怪退治の現場に着くまで寝ていた自分が、起こされているかのような様子で……少しだけ懐かしい物を感じたが、
(こんな事で想い出すなんてな……)
郷愁を駆り立てるのが、凶兆を呼ぶ車というのが何とも言えなった。
フレンがリーフを起こす様を、懐かしい思いで見たかったが、
(それよりも、大事な事がある)
礼人は少しでも、本国がどんな場所なのか見ようと車の窓に頭をくっつけると、遠目に建築物が見えて来る。
目を凝らして造形物の特徴を捕えようとしたが、目を凝らす必要すらない。
(……タイムスリップでもしたのか!?)
目を凝らそうとしていた目は大きく見開くと、驚いた猫のように丸くなる。
礼人の目に映るのは、白いペンキを塗られた木を基調とした長方形やら四角形の家、それにレンガを組んで作られた大きな建物が立ち並ぶ……フレン達の住む街が岩を削り出したかのような建築物なら、本国のは家なのだ。
建築物に詳しい訳では無いので、上手く表現をすることが出来ないのだが、高台から街を見下ろした時、一面は岩だらけで、迷路のように入り組んでいたが、本国は整然と家が建物が立ち並んでいて……
(近代……)
礼人は本国の家を見て、パッと思い付いたのが、その言葉であった。
一応、誤解しないで貰う為にも先に言うが、これは古代ローマが優れていないとか、そういう意味で言っているのでは無い。
古代ローマの技術も優れているが、いかんせん文化の時代が違い過ぎる。
道を進んでいた車は、本国へと続く舗装された「道路」にタイヤを乗せると、車はそのまま進行して本国へと入り込む。
道路の脇に、日が暮れれば眠り、日が昇ったら起きる時代を終わらせた街路灯が、等間隔に建てられているのも驚愕するが、
(ここは、どうなってるんだ!?)
『散切り頭をたたけば文明開化の音がする』教科書の明治時代を現わす時に使われる、言葉通りの風景が目の前に広がり、道路を行くのは自分達だけではなく、他の車も行き来している。
それだけでも、嫌な物を見ている気分になるというのに、
(ふざけ過ぎだ……)
地面をよく見れば、鉄のレールが地面に埋められていて、ここには鉄道があるという事を示唆していた。
あまりの文化の発達ぶりに、礼人は悪い夢を見ているかのよな錯覚に陥りながら、タイムスリップしたかのような景色を見続け、
(やっぱり珍しいんだ)
車の中でキョロキョロと首を動かす礼人と同じようにリーフも、いつ見ても不思議な街並みを堪能する。
リーフも一緒になって街並みを見渡してくれるお陰で、礼人が周りを確かめる為に見渡しているようには見えず、
(このままにしても大丈夫か……)
フレンは、建物の窓際に見張りらしい影を見たが、問題は無いと判断するのであった。




