夢の中60
一方的な暴力、そこには慈悲等無い。
淡々と礼人は同じ作業を繰り返し、鋼鉄の巨人もまた同じ作業に付き合うように傷付けられていく。
そうして、何度も幾重に繰り返された行いに終止符が打たれる時が来た。
何度も何度も繰り返された行いで体は限界に達し、限界に達した体を支える力はどこにも無く、最後の力で踏み出した足はもつれて、そのまま崩れながら雪の上を水面に投げ付けた水切りの石にように吹き飛ぶと、
(……ごめんねじいちゃん)
礼人は羽をもがれた蝶のように雪の上で力尽きたのであった。
雪の上でもがく礼人。
羽をもがれた蝶が落ちれば、どうなるかは誰にでも分かること。
鋼鉄の巨人にとって触れる事の出来ない相手はややこしい相手ではあったが、ややこしい相手であって、それが優劣を付け、この戦いを決定付ける物では無い事は分かっていた。
例えば、これが逃げる礼人を追い掛けるというのなら、鋼鉄の巨人は決して勝つことは無かっただろう。
だが、現実は違う。
ここから逃げ出さずに戦いを挑むのは、鋼鉄の巨人に勝てると思っているというよりは、
「ぐっ……」
「がぁ……」
雪の上でのたうち回る仲間を助けたくて、何とか追い払いたくて銀の羽を必死に羽ばたかせていた。
(……哀れな)
逃げる事も引く事も無く戦いを挑み続ける銀の羽を持つ敵。
速くて、拳を捉える事が出来ない相手。
だが、それは同時に自分よりも速いだけの相手。
確かにあの光の球体は驚くものがあった。
これが我々のように、異界に跳ばされる事を前提に作られた者でなければ、十分に致命傷になるだけの力はある。




