夢の中6
「なんじゃろうのぅ……」
古今東西、問わずに人の亡骸に取り付いて悪さをする妖怪や幽霊はいるが、
「これだけ霊能者が集まっているのに、それでも向かってくる何て正気の沙汰ではありませんね」
その古今東西を問わずに襲って来る妖怪や幽霊と対峙したこともあれば、文献で知っていたりはするが、
「そうですね~……こんなに弱々しい霊力なのに向かってくるのは余程追い詰められているのか、それとも考えられない程に低級な存在か……まっ、それは後から考えましょうか?」
アニーは自分達の方に向かってくる存在に意気揚々としながら立ち上がり、
「少し外の空気を吸ってきます。誰か一緒に外に行かれる方は?」
「……タバコを吸いに行ってきます」
「私も行こう」
幾人もの霊能者達が迎え撃つ為に席を外そうとすると、
「ならワシも行くかのう」
二月も立ち上がって一緒に外に出ようとするが、
「いえいえ、二月様はもう少し奥様の側にいてあげて下さいな」
アニーがそれを止める。
「そうは言うがのぅアニー……」
「そう言ってるんです二月様、それでは出掛けて来ます」
アニーは二月の言葉に耳を貸さずに遮るとそのまま出て行ってしまう。
正直、霊力の具合から見ても総動員する程では無いだろうし、アニーなら問題無く解決して来てくれるだろう。
「……そうじゃのう、妻の側にいるのが夫の役目」
二月は迫って来ているものをアニーに任して妻の側に行き、
「礼人に会えないのは寂しいかもしれんが、最期の時には会えるはずじゃから……」
妻に微笑み掛けて、お別れの時をしばし噛みしめていた時であった。
「二月様!!」
外に出た一人の霊能者が二月の元へと慌てて駆け込んでくる。
「何事じゃ?」
二月は慌てふためいて戻って来た仲間とは対照的に落ち着いた態度を見せる。
それは年長者として、部隊を執り仕切る者として自分まで慌てふためけば部隊全体が混乱することになるから落ち着いて見せてはいるが、内心ではアニーがいながら未だに弱い霊力を持ったそれを始末出来ないことに疑問を思っていた。
霊力が弱い=弱い霊、弱い妖怪とは限らない、時には条件によっては霊力が高まる場合もあれば特定の条件でしか始末出来ない場合もある。
それらを含めて、アニーなら何とかしてくれるであろうと思っていたのだが、
「二月様、とりあえずこちらへ!!」
こんなにも部下が取り乱すには事情があるに違いない。
「ならば、ワシも赴くかのう」
妻の冷たくなった頬を一度をさすり、
(大丈夫……何が襲って来ても君を守るよ……)
二月は妻の亡骸を後にしてアニー達の元へと向かう。