異世界のアフレクションネクロマンサー48
二人の視線に、騒いでいた勢いは無くなり、しょんぼりとして首を垂れると、
「すみません……」
はしゃぎ過ぎた子供が親に怒られたかのように、礼人は静かになった。
フレンの一声で気落ちする礼人……アフレクションネクロマンサーという英雄が、叱られた子供のようにしゅんとする様に、
「どうぞ、お乗り下さい……乗り心地は保証します」
案内人から運転手となったエルフは、少しだけ同情してくれたのか、叱られた子供を慰めるように声を掛けてくれる。
「あの…アフレクションネクロマンサー様。あまりお気になさらずに……初めて車に乗った時は、私も驚きましたから」
初めて会った時から、常に大人のような態度を取って来た礼人が、いきなり子供っぽくなってしまい、そんな所を見せられたリーフは少し面を食らってしまったが、それでも、自分も子供の時に同じように驚いた事を伝えて、怒られたことを慰めるが、
「では、失礼致します…二人共早くしなさい」
フレンは、叱った礼人を慰める事無く、それ以上の事を言わない代わりに、車の中に速く乗るように、語気を強める。
「お父様…お言葉ですが……」
いつもなら、こんなにも簡単には怒った態度を見せないはずの父が、礼人に対して強く当たる事に、少しだけ反論しようとしたが、
「いえ、良いんです……失礼しました」
礼人は、リーフの言葉を遮ると、フレンの後を追う形で車に乗り込むのであった。
________
『カタカタカタカタ』
フレンに怒られた礼人に、礼人を怒ったフレン……この二人が一緒に車の中という狭い空間にいて、会話が生まれるはずも無く、何とも言えない重苦しい空気が淀む中で、
「車って本当に凄いですよね。籠より静かで速くて……」
リーフが、場の空気を和ませようと会話の流れを作ろうとする。
リーフの言った通り、走る車はオークが『ガラガラ』と鳴らして走るより静かで、オークが『ガラガラ』と籠を引っ張るよりも振動も無く、座席の沈み込む柔らかさはベッドの上に座っているようで、その乗り心地は、籠とは比べ物にならない。
オークを必要としないで走る車も驚きだが、贅沢とは違う、これ程の快適な物は、乗ったことがなければ想像すら出来ない。




