異世界のアフレクションネクロマンサー46
これまでのアフレクションネクロマンサー様として向けられた反応から考えると、彼等の反応はあまりにも味気ない物だが、それは逆を言えば、彼等にはアフレクションネクロマンサー様程度では揺るがない主人がいるという事で、
(気を引き締めないと……)
仲間からは英雄としてチヤホヤされ、貴族からは畏怖の存在として扱われ……必ず、何かしらの反応をされて、良い意味でも悪い意味でも、特別扱いされていた心持ちを戒める。
アフレクションネクロマンサーを特別扱いしない、案内人に連れられて屋敷の中に入ると、そこは装飾のされていない簡素な白い壁、そこに備えられたランプに、木目の長い廊下があった。
そんな簡素な作りに、屋敷なのだから、花の一輪も差された花瓶や、白い壁に映える絵を飾れば良いのにと思うが、
(塔の見張りに従事している人の為の、屋敷なのかな?)
人が住む為というよりかは、一時的な詰所みたいな物なのかもしれない。
人の住んでいる色を感じられない代わりに、しっかりと手入れをされている空間は、少し手を加えれば立派な屋敷になるというのに、もったいないと思いながら、
(何が引っかかってるんだろう……)
屋敷の中に入る前に生じた違和感に、戸惑う。
変哲の無い屋敷は美しくあるのだが、礼人の中と一致しなくて……
(あの、貴族もどきのせいか?)
戦場で出会った、高慢ちきな貴族。
礼人の頭の中で、贅の極みをしている貴族を思い浮かべたのは、最初に出会った高慢ちきなエルフ達のせいで、その高慢ちきなエルフのイメージがあるから、この様な質素な屋敷とのギャップが生まれているのかもしれないが、
(でも…自分達の相手をしているということは……)
これ程、規律正しく行動する彼等を、貴族もどきというのは失礼なのは分かっているが、下級民を相手にする彼等もまた、身分の低い貴族なのかもしれない。
身分が低いから、質素な佇まいで、忠実に任務をこなしているとも言える。
「皆様、お入り下さい」
礼人の中で、ますます違和感が増えていく。
ポツポツと、悩みの点ばかりが増えて線にならないもどかしさに、小虫がチョロチョロと肌の産毛を触るような、むずむずとした物を感じていたが、
「ここからは、私が本国までご案内します」
「これは!?」
通された部屋の中で、ある物を見た礼人は、むずむずした痒みを引っ搔いたかのような鋭い感覚が走る。




