異世界のアフレクションネクロマンサー45
馬鹿な答えに、こんなにも頭を悩ませたことを馬鹿らしく思うと、後頭部がむず痒くなって、カリカリと掻くと、
「では、我々はこれで」
こんなことは日常茶飯事だと言わんばかりに、自分達の事を運んで来てくれたオーク達は、何一つ文句を言わずに踵を返して、街の方へと帰ろうとしたが、
「あっ!?これを!!」
帰ろうとしたオークを、礼人が呼び止めると、小さな布袋を渡す。
「これは?」
突然渡された小さなぬ袋、それに籠運びの頭は、不思議そうに頭を傾げると、
「木の実です。帰りの栄養補給にでも食べて下さい」
「おぉっ、心遣いありがとうございます」
礼人の小さな気遣いに、頭は笑って喜んでくれて、木の実が入った小袋をみんなに見せると、みんなが一様に礼人に会釈をする。
いつもなら、そそくさと帰らないいけないし、それが当たり前だと思っていたから、この小さな心遣いが、子供からお菓子をプレゼントされたみたいで、こそばゆくて、
「アフレクションネクロマンサー様。お早いお帰りを……」
「はい」
さっきはすぐにでも、この場から離れようとしていた頭であったが、礼人の小さな心遣いに返礼する形で、改めて礼人の無事を祈る言葉を贈ると、
「離れるぞ」
名残惜しい気持ちを抑え、中継所に長く留まる事を許されない身を連れて、休む事無く来た道を走って帰って行く。
そんな彼等に礼儀を尽くしたくて、その姿が見えなくなるまで見送ろうとしたが、
「行きましょう、アフレクションネクロマンサー様。あなたの心遣いは彼等に十分伝わっています」
「……はい」
フレンは、礼人の心遣いに感謝しながらも、自分達の身もまた、好き勝手に出来ない事を伝え、フレンが屋敷の方へと向かうので、それに習って礼人も付いて行く。
目の前の屋敷は西洋風の建物で、屋敷というだけあって外から見ても分かる広い……
(んっ?)
屋敷へと向かう、ほんの小さな間。
その、ほんの小さな間で、礼人の中に小さな違和感が生まれる。
(なんだ…この違和感は?)
漫画の中や観光地で無いと、見掛けないような古めかしいデザインの建物、この世界に合っていると言われればあっているのだが……
「お待ちしておりました。フレン様」
「お待たせしました」
奇妙な違和感に、性懲りも無く頭を悩まそうとしていた礼人の思考を止めたのは、屋敷の中から出て来た二人のエルフだった。
「確認をしますが、行かれるのはフレン様、リーフ様……そして、アフレクションネクロマンサー様の三人のみですね」
アフレクションネクロマンサー様と呼んだエルフだが、そこにはリーフの時のような羨望の眼差しはなく、だからと言って身分が低い者を相手にしているという軽視するような眼差しで見る事も無く、
「間違いありません」
「では、こちらへ」
事務的に淡々と、自分の役目をこなしていく。




