異世界のアフレクションネクロマンサー43
そう考えた時、わざわざ休ませずに走り続けさせるという、こんな小細工を施すのは逆効果では無いのだろうか。
やらないよりやった方が良いという、考えがあるのかもしれないが、街の者達に本気で反旗を翻されたら、本国まで兵士達が流れ込んで来て、小細工など無意味に帰す。
(逆らえないと高を括っているのか?)
その、やらないよりやった方が良いという行いが反感を買い、しかも、本気で街の者達を怒らせたら、いつでも襲われるという事に繋がるのを、貴族達は気付いてない。
「そんなに気を張って、どうしたんだい?」
現に、フレンから不信感を買われてしまい、礼人に第三者の視点として本国と街の境遇を見て欲しいと言われる始末。
「いえ…やっぱり、緊張してしまいます」
そんなことにも気付けないのかと、愚か極まりないと表情をしかめると、
「……無理なお願いをして、すまないとは思っているが、もう少し肩の力を抜いて欲しい」
フレンは、礼人が何かを感じて強張った表情をしているのを勘付き、礼人を落ち着かせようと助言をする。
「……失礼を」
礼人は、フレンの言う事で自分がこんなに思考を張り巡らせているのが、緊張から来ている事に気付かされると、小さな謝罪をしてから、腕と足を組む。
目上であるフレンの前で腕と足を組むのが、良くない事だと組まないようにしていたが、精神と体をリラックスするにはこれしかない。
もちろん、その意図をフレンは理解し、礼人が対面して腕と足を組む事を咎めたりしない。
こうして、礼人は落ち着きを取り戻すと、籠の中で『ガラガラ、ガラガラ』と鳴り響いている音がまた聞こえ始め、ゼンマイ時計のように籠の中で時の音が響く。
『ガラガラ、ガラガラ』と時が鳴り響き、次第に籠の窓から朝日が入り込んでくると、外が明るくなったのを知らせてくれる。
世界が朝日を向かい入れて、安息の時から抜け出したことに気付いた時には、
「フレン様!!到着します!!」
籠に並走していたオークの一人が、到着を告げる大きな声を出し、休み無く飛ばしていた籠の速度が落ちていく。
前へ前へと進んでいた時の音が『カラカラ』と音を小さくし、それが次第に耳に聞こえなくなると、
「二人共、降りる準備をしてくれ」
体にも籠が進んでいる感覚が無くなった所で、フレンが籠から降りるように促す。
「はい」
フレンの指示に従い、礼人は促されるままに籠から降りて、本国が一体どんな所なのか、自分の想像通りなのか、それとも想像以上なのかと身構えながら降りたが、
「これが本国……?」
目の前に見えたのは、街の中から見た、森に囲まれた塔と大きな屋敷であった。




