異世界のアフレクションネクロマンサー41
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『ガラガラ』と軽快な音を立てる籠ではあるが、車輪の衝撃を吸収するサスペンションを持たないから『ガラガラ』という音に乗って揺れる籠。
そんな揺れる籠に身を任せて、
(本国か……)
礼人の頭の中では、まだ見ぬ本国に対して思いを馳せている。
街の様子から、礼人が思い浮かべる本国は、色とりどりの衣装が舞う劇場や、肉体が躍動して血飛沫が舞うコロッセオ、そして、水をふんだんに使って大量の薪を使った大浴場。
自分が知りうる古代ローマの姿が浮かび、それに、各街から集めた食料で、食の贅沢を極めて無駄に消費して豪遊する様子を重ねると、
「成金趣味というか……」
「どうしました?」
「あっ…本国が、どんな所なんだろうと思って」
勝手に胸の中で思った事なのに嫌悪感を覚えて、少しだけ嫌悪感を漏らしてしまった。
勝手に胸の中で思った事でも実際、戦場であった貴族もどきの乱暴な行為を、権力を振りかざす事を下級民が許さないと思っていても、現代のように、権力を自分の欲を満たす為に使う事を糾弾する者はいない。
貴族もどきより、上の存在がいるらしいが、その上の存在は、貴族もどきが暴力を振るい、強者の権利を執行する事を認めている。
そして、貴族もどき達の玩具として虐げられる事を当たり前とし、あるがままに受け入れる事しか出来無いフレン達。
まるで、絵に描いたかのようなテンプレートな状況に、どこの世界でも同じような事が起きるのだと、今度は内心で溜息を吐き出す。
ガタガタと揺れる籠に頭を当てて、知識の中にある世界とこの世界の文明レベルを照らし合わせた世界をシェイクさせて、滅茶苦茶にして頭の中から一時的に忘れようとする。
少しだけ面倒事を忘れて、外の景色を眺めようとすると、
「よしっ!!交代だ!!」
「おうっ!!」
引き手役と、後から着いて来ていた者が交代する姿が見えて、周りの景色よりも、休む事無く走り続けるオーク達に目が奪われた。
「普段から、こんなに引き手役を代えて急ぐものなんですか?」
「いやっ、今回は本国に呼ばれて急いでいるから、休憩無しで突き進んで貰っているが、平時でも休憩は許されないが、こんなにもスピードを上げる必要は無いな」
「日にちを分けられれば良いのですが、本国の方はそれを認めてくれないんです」




