異世界のアフレクションネクロマンサー38
「君が見た貴族というのは、あくまでも本国の低級者だ」
「……貴族もどきという事ですか?」
「そうだ。確かに地位はあるが、本当の貴族の怒りに触れれば簡単に都落ちする位には、奴等の地位は低い」
「なるほど……」
あの時、鞭を怒り狂って振るっていたのは、敵に追い詰められている焦燥感から来る八つ当たりだけじゃなく、自分の立場が揺るがされているという事もあったらしい。
確かに、彼等の身分が高いのなら、拠点にいた貴族達だって、フレン達を置いてそそくさと逃げ出した所で、誰がそれを責められるだろうか?
天と地ほどの身分の違いがあるというのなら、フレン達を犠牲にした所で、一切のお咎めがあるはずも無い。
それなのに、貴族達が自分の命に危機が迫っているのに、すぐに逃げ出さずに……いや、逃げ出せずにいたのはただ一つ、
「本当に、権力を持っている人達がいるという事ですね」
「そうだ」
彼等もまた、上の者から睨みを利かされ、いつでも、その首をはねられる立場であるという事。
フレンは、椅子の背もたれに背中を預けて、椅子の足を軽く上げて揺りかごのように揺らし、
「私は、貴族もどきの鬱憤を晴らす為の道具にされる程度で済むだろうが……」
それは、それで面倒事なので、あまり気分が良い物では無いが、
「君は、貴族の人達の目の前で色々と質問される事になるだろう」
「……その場で殺される可能性は?」
「あまり聡い事を言えば、その可能性はある。だからこそ、君が言った、正義感に厚い少年というのは一番無難な選択肢ではあるんだ」
礼人も、話をしている中でベッドの座り心地が悪くなって、お尻を少しムズムズさせる。
一難去ってまた一難とはよく言ったもので、立て続けに起きる命の危機に、
「私も、命が惜しいので、何とか乗り切ってみせますよ」
礼人は苦笑を隠し切れずに見せる。
「君は、本当に頼もしいよ」
こんな厄介ごとを抱えさせられても、苦笑とはいえ笑って見せる彼に、フレンは心の底から称えるのだが、
「……申し訳ない程度に、君に一つ頼みごとを出来ないだろうか?」
「何を……お望みですか?」
礼人は、これ以上の厄介ごとを任せられることに、苦笑していた笑顔が引きつってしまう。




