異世界のアフレクションネクロマンサー36
部屋の中を舞わせていた数十匹の蝶を全て、矢の形にして浮かべ、その中から一本だけ自分の手元に寄せ、
「何か…改良することは出来無いのか」
アニーさんの見よう見まねで作った矢に、何か手を加えるべきではないのかと悩んだが、
(アナタのマナの扱いは、子供のそれと同じです)
リミィに言われた言葉を思い出すと苦笑して、
「言われなくても……分かっていますよ」
自分の伸びしろは、他にもあることを思い出す。
児戯に等しいと言われたマナ。
そのことをすっかり忘れていて、
「ちょっと、やってみるか」
空に浮かべた霊力の矢を全て体内に戻し、代わりにマナを手の中で蝶の形にしようとしたが、
「修行不足か……」
蝶の形を作るなど夢の話。
マナは手の平から液体のように溢れるだけで、形にすることは出来ない。
礼人にとってはマナはあくまでも、霊力に混ぜて強化する物であり、到底扱える物ではない。
これ以上、体内に残っているマナを無駄にこぼすのは……
「あれっ…マナが体内にある?」
何気無くマナを使ったが、礼人は間違い無く出来損ないの人魚を葬る時に、精魂尽き果てる一撃を放って全てを出し切ったのだが、マナが体内に満たされている。
マナは普通に過ごしているだけでも、少量だが体内に蓄積されるが、
「そうじゃないよな」
そんなのはプールに小さじ一杯の水を足すようなことで、少なくとも礼人には寝ているだけで、マナを体の中に満たす術を持っていない。
多分だが、寝ている間にリーフ達が何か処方をしてくれたのだろう。
(本当に……お世話になっていたんだな)
自分が、ここの人達に保護されていたのを実感して、さっきの腹の探り合いで言ったお礼ではなく、ちゃんとしたお礼をしないといけないなと思った所で、
『コンコン』
「はい?」
部屋の外からノックが聞こえたかと思うと、
「入っても?」
フレンの声が続けて聞こえて来た。




