旅立ち348
礼人の言葉の通り、巻き付いた赤い触手は礼人の霊力に阻まれて、ケーキの箱をラッピングするリボンのように柔い。
「あの・・・これで、終わったんですか?」
アフレクションネクロマンサー様である礼人を取り戻し、出来損ないの人魚は敵でないと宣言した通り、出来損ないの人魚はもう相手にならない。
このまま地上に帰り、この場から立ち去れば、それは即ち勝利なのだが、
「・・・どうしても、許せないことがあるんだ」
「許せないこと?」
ここから立ち去る前に、どうしてもしておきたい事がある。
「・・・それは、時来さんの仇討ちですか?」
「やっぱり・・・あれは、ばあちゃんだったんだ・・・・・・」
人影となってしまっていたせいで、さよならも、ありがとうも・・・なにも伝えられなかった・・・・・・亡くなった後も自分を心配して、ひっそりと見守ってくれていたことに心を締め付けられる思いをするが、
「・・・ううん、それは私がばあちゃんを、縛り付けていたんだ・・・・・・」
きっとそれは、未熟な自分が捕らえてしまったばあちゃんの魂、最後まで甘えてしまったのは、自分のせいであり、それは出来損ないの人魚を許せない理由とは違う。




