旅立ち346
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時来さんに言われた通りに、彼の名前という鍵を回した。
時来さんの言う通りなら鍵は開いた。
後は、礼人自身がドアを開けて出てくるだけ、その瞬間を待ちわびれば良いのだろうが、
「もう、遅い!!」
リーフの足に絡み付いている、赤い蜘蛛の糸が締め上げてきて、肉が圧迫され、足が冷たくなって痺れる。
気付かれてしまった。
繭の中のコアを取り戻す為のドアを開けた事を。
出来損ないの人魚は、自分が生きるための繭の心臓のドアを開けたことに怒りを覚えて、怒りで手を握るようにリーフの足を締め上げ、
「うっ!?」
赤い蜘蛛の糸がもう一本、リーフの首に伸びて巻き付いて、絞め殺そうとするが、リーフも黙ったままでやられるつもりはない。
繭から右手を引き抜き、首に巻き付けられた蜘蛛の糸の間に指を潜り込ませて、隙間を確保し、
「分からない・・・のかしら・・・鍵は開いたのよ・・・・・・」
リーフが言った通り、鍵は開けられた。
ここでリーフを殺しても、開いた鍵を閉める事は出来ない。
出来損ないの人魚がやっていることは、単なる八つ当たりに過ぎず、その事を分かっているからリーフは勝ち誇って笑って見せると、
「うぐっ・・・!?」
その勝ち誇った笑みが気に食わないらしく、リーフの喉を締め付ける糸がよりいっそう強くなる。




