旅立ち344
繭に抱きつき、宙ぶらりんになっている自分。
(そうだ・・・私の今いる場所は・・・・・・)
平和な自分達の街の、自分の家の部屋の中のベッドの上じゃない。
敗北者は容赦無く、命を奪われてしまう戦場、勝者には生きて帰る事が許される戦場。
リーフは、さっきまで見ていた夢を思い出す・・・温かい日差しに、柔らかいベッド・・・・・・自分だけのプライベートエリアの心地良さ・・・・・・
「時来さん・・・・・・」
ではない。
リーフが思い出しているのは、あの夢の中であった、お婆さんから預かった鍵。
右腕に力を溜めて、繭の鍵穴に手を差し込み・・・・・・
(任せて下さい・・・・・・)
時来さんからの願いを受け止めて、
「礼人ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
彼が自分の名前を思い出し、自分の存在を思い出せるように力の限り叫んで、鍵を回す。
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置いてかれた・・・・・・?
「違う・・・・・・」
覚悟という空気で張りつめ、少しでも衝撃が加われば、簡単に割れてしまいそうな程に震えていた想いは、自分の心すら震わせて、
「助けようとしてくれているんだ・・・・・・」
人影の左目から、光の涙こぼれる。
あの小さなモンシロチョウが、この世界から飛び立って外の世界に飛び立ってしまえば・・・・・・
「命を懸けて・・・・・・」
間違いなく、消えて無くなってしまう。




