旅立ち343
しかし、時来が言った通り彼女は霊能者ではなく、命を振り絞って夫の所に行くように伝えた為に、魂は微弱となり、礼人の中にいても気付かれず、自ら声を掛ける事は出来なかった。
そうして、礼人の一部の記憶の中の、一部の自分と重ねることで側に居続けたが、奇跡が起こった。
礼人の方から、自分がいる記憶の中に入って来たのだ。
(あなたがこうして、私と話せるのは、あなたにも力をあるかでしょ?)
「それが鍵なんですか?」
(それは条件と言った方が正しいわ)
今、こうやってリーフと話が出来るのは、リーフの力を借りているから、もしリーフに力が無ければ、時来はここにいられない。
(私の声じゃ、あの子の心に届かない・・・・・・あの子の名前を呼んであげて欲しいの)
「アフレクションネクロマンサー様!!」
(その名前はまだ、あの子の名前じゃないわ)
「礼人!!」
リーフが、人影になってしまったあの子を呼び醒ます鍵を手にした事に、時来は満足そうに頷くと世界が真っ白に輝いて、あまりの眩しさ目を閉じた。
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目を閉じてても、差し込む白い光に困惑したが、次第に弱まっていく光に、眠りから目を覚ますようにゆっくりと目を開けていくと、
「戻って来た・・・・・・」
現実の世界が映る。




