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旅立ち337
命が宿る卵を、優しく包み込む抱擁。
八方塞りで、どうにもならないと半ば心が折れかけている人影の気持ちを和らげる……というのもあるが、
「あの……」
優しく抱擁するその柔らかさには、ぎこちなさもあり、
「……何を?」
老婆は腕の中にいる者の存在を感じ、その重さを感じ、命の天秤に、自分の命と人影の命の重さを掛けて、
(…………)
老婆は名残惜しそうに、人影に届かない言葉を投げ掛けて、その腕の中から人影を離すと小さな……モンシロチョウのように小さな蝶になって、外へと繋がる光へと旅立ってく行くのであった。
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「ふざけないで!!」
リーフはそのまま落下しても、地表スレスレで翼をはためかせれば、みんなが受け止めてくれると考え、その考えは決して間違っていない。
地上にいる屈強なオーク達は、リーフが空から落ちて来たら身を挺して受け止め、エルフ達も遠目からでも、リーフが落ちて来たのを見たら、投石を防ぐ為のソフトウォールを飛ばす。
そこで、ボロボロの翼をはためかせれば助かるかもしれないのだが、
「離して!!」
リーフの足は、赤い蜘蛛の巣に絡め捕らえられていた。




