旅立ち332
肉体に戻るのに、生き返るのに必要なキーを見付けるまでの時間を作り出してくれたのだ。
「思い出さなきゃ!!」
みんながくれた命、無駄には出来ない。
まだ、自分には為さねばならない事があるはずだから、こんなにも死んで逝く事に抗っている。
安らかに、死んでなんていられない。
このままの精神で肉体に戻っても、肉体と精神は融合せずに植物人間になって、意識の帰らない人になってしまう。
元の世界に戻ってから、精神をゆっくりと癒しながらキーを探す時間があれば、それも選択肢にも入るかもしれないが、
「あの光は、そういう事か!!」
確かに、あの輝く光は瞬いて自分の事を呼んでいるが、それは眠る子供を起こそうというものでは優しいものでない。
目を醒まして意識を取り戻して欲しいという切なる願い。
「どこに鍵があるんだ!!」
ここは自分の中の記憶の世界。
名札でも、メモ書きでも何でも良い。
部屋の中を見渡して、名前か何か書かれた物を見付けられれば・・・・・・
「そうだ!!」
教科書だ。
引き出しの中に目ぼしい物が無かったからスルーしてしまったが、小学生の頃の教科書なら間違い無く、名前が書いてある。




